Scene.8 素敵な本によろしくと。
高円寺文庫センター物語⑧
「よし、行くぞ!イェイ♪」
今日は文庫センターの遠足『の・ようなもの』。愛車にバイトのみんなを乗せて、箱根までドライブなのだ。
誰も男子は参加しなかったから、乗っているのは女子ばっかり4人! ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤと目立つのかな? 信号で停車のたびに、周りのクルマからのぞき込まれるって・・・
「店長、もしかしてさ。風俗店の店長と、その女の子たちに見えているんじゃない」
「フィリピン・パブの御一行様に見えているのかも?」
「そう言えば、昨日のバイト面接に凄い女子が来たんですって? 店長」
「そうそう、なんでもクロちゃんの大学の同期でミス・キャンパスらしいぜ」
「じゃ、客寄せパンダにも採用。決まりでしょ」
「いや、NO.1は取らないよ。自己愛が強いだろうからさ、ちやほやされたい方でしょ?接客には向かないと思う。
むしろNO.2やその下で、苦汁をなめてひと様への思いやりと親切のきっかけを掴めたような人材の方がいいんだ」
「店長、深い! でも、クロちゃんはがっかりね」
「そりゃさ、スタッフの仲良し倶楽部じゃないんだから」
「店長、こないだはバイトくんを初日でクビにしたんですって?」
「だってさ、面接と初日面談で万引き対策をしっかり教えてレジに立って貰ったろ。そしたらいきなり、バイトの先輩に面と向かってお喋りし出すじゃん。
店内でお客さんへの目配りを切るなって、重要事項を初日から忘れたら見込みないよ。あのお喋りキャラは変わらないって、辞めてもらったんだ」
「それは無理ないわ、万引き対策は店長の大原則ですもんね」
「そっさ! 今日は仕事を忘れて、箱根をドライブして湘南の珊瑚礁でカレーを食べて帰るぞ」
「イェイ♪」
「店長、明日なんやけど」
「なんね、内山くん」
「ちょっと、BIGになり始めた知り合いの女の子を連れてくるけん会ってくれんと」