Scene.10 毎日がエキサイティング!
高円寺文庫センター物語⑩
「こっらぁ~京子っぺ! まった背中におっぱいをつけるんじゃないの!」
「あはあはあは、店長・・・・つけてないってばぁ~」
「レジのこっちは狭いんだからな、おっぱい注意だぞ!」
「だってだってねぇ~おっぱいはぁ~」
「もお、いいから! ちょっと、こっち来い」
「店長! なになになに?」
「あのな、りえ蔵がしばらくバイト抜けるから文庫の担当してみないか?」
「わわわわわ! したい、したい、したい! です~」
「いいかぁ~京子っぺ!
だいたい、一冊に一枚。スリップまたは短冊とよぶモノが挟み込まれています。って、これはレジ業務を教えた時に話したよな?!」
「はい、販売の際の基本だって! 忘れていませんよぉ・・・・」
この頃は本や雑誌の売り上げを、データ管理するようになる以前のコンピューター前史時代。
じゃ、ボクらはどうやって本の売り上げを把握してたかというと、売れた本のスリップを集めて数字化していたor 勘ピューター。
ノートに記帳管理するのは、店内でのチェックが面倒なので書泉時代の経験から始めたのがスリップで管理すること。
初めて売れた本のスリップを、本に挟めるように裏側2、3センチ残して切断。日付けハンコで売れた日を押して、以降は売れ続ければ月ごとに日付を押して正の字で売上げ冊数を記入管理していた。
シリーズ物や類書などは、この売上げ数字が新刊時の注文数の参考になる。また書籍の新刊委託期間という、無条件で取次店に返品できる間に本の奥付けを参照して売上げ冊数から販売継続か返品かを決める目安にしていた。
最重要なスリップは本に挟まず、スリップ入れに保管して管理していた。書棚にある本に挟んでいるものが、万引きでもされてしまうとデータがなくなってしまうから!
万引きされた本かどうかの判断は、万引き犯がスリップの挟まったままの本を鞄に入れたりしていれば一目瞭然。
それを心得た常習犯だろうな、店の外にスリップと売上げ管理スリップの二枚が捨てられていたことがあった。鮮明に焼き付いた画像で記憶している、フランス書院文庫だよ!
高円寺は、宵っ張りの朝寝坊。
「おはようございます!」っとスタッフがやって来て、早朝に配達された商品を開けて掃除も終えての開店は・・・・10時半くらい。
そんな開店前に、お客さんが飛び込んで来るのは事件の予兆!