ネット社会では国家も企業も個人も確信犯的いい子ぶりっこになる【藤森かよこ】
それがもっと厄介な方向に行く可能性もあるにはあるが・・・
■ネット社会で期待される人間像
多様な価値観が溢れるネット世界に慣れると、個人は、そこから自分にとって違和感のない価値観を選び、自分の中で「複数の価値観」を並立させる。複数の価値観が自分の中で並立しているので、自分が属するヴァーチャル仲間集団も複数となる。
つまり、岡田斗司夫の言う評価経済社会においては、非常に柔軟で、情報に自分を開き、自分を変えることを恐れず、出会う人すべてから学ぶ姿勢があるが、決していい加減ではなく、多くの人々が共有する倫理性は体現しているが、隙のない優等生ではなく、自分の弱みや欠点も正直にさらけだせるが、他人にとって負担にならない程度にさらけ出せる人という点において、他人から信頼=評価good imageを獲得しているタイプの人間が生きやすい。
企業が「良心的で、ガラス張りの経営で、社会的責任を果たす方向性を持つ」ことが求められるように、個人は、悪人と言う評価を受けたり、つきあうのにややこしく面倒くさいタイプは、ネット社会の中でさえ居場所がなくなる。
前の時代なら、いかに不快で偏った人間であっても、地位や金があれば、それでも他人はつきあってくれたかもしれない。
ネット社会の中に生きる人間は、多くの価値観や世界観に晒されつつ、その中から自分の気持ちにフィットした価値観を選ぶから、自分の価値観とは合わない不快な人間とは、いくら地位や権力や金を持つ人間であっても、つきあいたくない。
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それは、つきあうのにややこしい面倒くさいタイプの人間は回避されるネット社会が生んだ人間関係のありように適応できない類の高齢者がイライラを募らせているからではないか。
今は、男だから、老人だから、年上だから、上司だから、地位があるから、金を持ってるからという理由では甘やかされることはなくなり、特別に気も遣ってもらえない。
快適に他人と関わりあいたいならば、他人にとって負担とならない人間でいなくてはならないのに。「いいひと」であることをアピールしなくてはならないのに。
この点について、岡田斗司夫は書いてはいないが、このようなネット社会には、女性の方が上手く適応できるのではないか。一般的に女性は、他人に気を遣いながら生きている。他人の地雷を踏まないように注意している。その習慣とスキルは、ヴァーチャルな世界でも発揮される。
アルヴィン・トフラーの言う高度情報化社会や、岡田斗司夫の言う評価経済社会においては、「良心的企業」や「いいひと」が生き残る。「世界コミュニティに貢献する」国家は真の国防ができる。
みんなが鵜の目鷹の目で査定しあうネット社会においては、SNSのプラットフォームであるFacebookやTwitterやGoogleがいかに検閲の目を光らせても、人々は暗号のような言葉を駆使して情報を交換する。
それは時に、ポリコレ・ヒステリーのような様相を示す。誹謗中傷の嵐に見える。しかし、SNSの世界では、ヴァーチャルな言語空間だからこそ、過度にファナティックで不快な投稿をする人間は簡単に排除される。
時間が経過すれば、ネット社会では、誰もがある程度は認めることができる良識ある意見を提示し、それを支持する人々が残ることができる。
つまり、ネット社会は確信犯的いい子ぶりっ子の世界を形成するだろう。いずれは、匿名の多いSNSの世界でも、利用者は実名を明らかにしていくだろう。そのほうが信頼され、評価public imageが上がるからだ。
■確信犯的いい子ぶりっこネット社会の危険さもある
まあ、それはそれで鬱陶しい世界かもしれない。ドロドロとした毒ばかりの本音をダラダラと開陳できないというのも、鬱屈がたまる。いつも「いいひと」ではいられない。
しかし、大手SNSから排除されてしまった人々のためには、大手SNSでは語れないことを語りたい人々のためには、「2ちゃんねる」とか「5ちゃんねる」とかの日本ローカル匿名掲示板がちゃんと在る。
『攻殻機動隊』の草薙素子少佐の言葉ではないが、「ネットは広大」だ。ネットを利用できる人間ならば、ちゃんと逃げ場もあるのがネット社会だ。わざわざ、うっぷん晴らしのために電車の中で刃物を振り回さなくてもいい。
ともあれ、邪悪さが罰せられない世界よりは、邪悪な行為が隠蔽されたままの社会よりは、悪を暴露しあい批判し合う確信犯的いい子ぶりっ子を競うネット社会のほうがマシだろう。
ただし、このことが厄介な方向に進む可能性はある。ヨーロッパの格言にあるように、「地獄への道は善意で舗装されている」可能性は常にある。たとえば、ほんとうに頭のいい闇の勢力があれば、ある方向へとネット世論を巧みに粘り強く誘導できるようにネット工作員の養成にもっと本気になるであろうから。
ともあれ、せっかく、誰もが情報を発信受信できる時代になったのだから、できれば、世界や社会が良い方向に進むことに寄与できる良い情報(福音)を発信したいし、受信したいものだ。
文:藤森かよこ
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