なぜ日本は「セコい人間」ばかりが跋扈しているのか? 百田尚樹、石原伸晃、ほら吹き維新【適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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なぜ日本は「セコい人間」ばかりが跋扈しているのか? 百田尚樹、石原伸晃、ほら吹き維新【適菜収】

【隔週連載】だから何度も言ったのに 第8回

百田尚樹大先生のトンデモ本『日本国紀』が文庫化されてまた大炎上。

 

■こうして歴史は捏造されていく

 

 面白いツイートを見つけた。ラノベ作家の百田尚樹先生の『日本国紀』が文庫化されたが、大阪東梅田の清風堂書店で、「歴史改ざんファンタジー」というポップと一緒に並べられていた。これは百田先生に失礼。『ウォーリーをさがせ』に匹敵する間違い探し本の名著なのに。

    *

 冗談はさておき、ここまで嘘とデタラメばかりの本を出してしまうというのもある種の才能である。単行本では「初版から第9刷にかけて少なくとも50カ所以上の修正を重ねるお粗末さ」(「毎日新聞」12月16日)。しかも、重大な歴史的事実の誤りが文庫化でも修正されていなかったという。

 単行本が出たときはかなり話題になった。皇室の「男系」の説明もデタラメだし、内容も支離滅裂。織田信長は「一向一揆鎮圧の際も女性や子供を含む2万人を皆殺しにしている。これは日本の歴史上かつてない大虐殺である」と述べる一方で、「日本の歴史には、大虐殺もなければ宗教による悲惨な争いもない」。矛盾をツイッターで指摘されると、百田は「そういう文学的修辞が読み取れないバカがいるとは思わなかった」と返答。フランシスコ・ザビエルとルイス・フロイスを間違えていた件に関しては「どっちにしても外人や」。本を購入し、具体的に間違いを指摘してくれた人たちを罵倒するって……。

 さらにはウィキペディア、新聞記事や関連書籍、ネット上のまとめ記事からの膨大な無断引用が発覚。百田は「全体の1%にも満たない」と開き直ったが、そもそも量の問題ではない。指輪3個を盗んだ泥棒が取り調べで「1個だけだ!」とドヤ顔で言うようなものだ。なお、その後の検証でコピペとされる部分は3%に達している。

 人間は完璧な存在ではないので、間違ったことを書いてしまうことはある。そのときは謝罪して修正すればいいだけだ。しかし、 間違いを犯しても、開き直り、そのまま放置する。さらには、事故本を文庫化して売る。こうして歴史は捏造されていく。

 これは今の時代を象徴している事件でもある。事実と嘘の境界がなくなっていくのだ。

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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