2022年、日本人はマスクを外せるか? マスクは「感染対策」「道徳的ルール」を経て「人間関係の意思表示」となる!?【松野大介】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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2022年、日本人はマスクを外せるか? マスクは「感染対策」「道徳的ルール」を経て「人間関係の意思表示」となる!?【松野大介】

■人を計る基準としてのマスク

 

 あるバーで、店員の二十歳くらいの女の子と話した時、「ヘンなおじさんのお客が来たら、マスクしないで気軽に話しかけないでよって頭きちゃう。でも感じのいい男性だったらこっちからマスク外して話しちゃう」と言われたことがあった。

 他の、いろんな飲食店の店員を見ると、常連客と話す時はマスクを顎に引っかけている店員が、見知らぬお客が来るととたんにマスクする時もある。常連のほうが感染しないという理由ではない。

 若者の合コンで、男性陣の見た目が気に入らなかったら、女の子たちは全員ドリンクを飲む以外にマスクを取ることなく、すぐに退席することもあるらしい。

 つまり人間の値踏みにマスクが使われている。もともと人間は知人や新たに出会った人を自分の価値基準で振り分ける。「便利な取引先」「媚びたい上司」「好きな異性」「なんでも話せる友人」「イヤなやつ」「親切な人」と様々。

 拒否したい相手ならマスクをするし、近づきたいならマスクをとることを実践する人やシチュエーションがある。「あなたと私ってマスクを外せる間柄でしたっけ?」というような基準を持つわけです。

 こういう現象を私は否定しない。仕方ないと考える。コロナ禍で言われ続けた「新しい生活様式」は、その人その人の価値基準が態度に表れる形で馴染んでいくと思うから。

「変なおじさんが近づいてきたらマスクを伸ばして顔をほとんど隠すわ」とか「好きな女が初めてマスクを外して話してくれた」とか「イヤな上司に呼ばれたら不織布マスクで行く」とか「気になる男と会う時はワンピースとマスクの柄を合わせちゃう」とか。

 マスクは、コロナの状況により感染対策の意味合いが強まったり弱まったりし、同じように、「他人への関わり方」を表わすアイテムとして使う頻度も強弱しながら常態化していくと私は考える。

 新型コロナが本当に収束した時、マスク人口は減るだろうが、一定数の日本人は手放さないだろう。

 私たち日本人は他人に「嫌い」とか「好き」と言うのが恥ずかしい国民性で、欧米人のように口を開いて意思表示するのが苦手だから、そのため口元を隠せて気持ちも伝えられるマスクは重宝してしまうというわけだ。

文:松野大介

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松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

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