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2021年最大の訃報・神田沙也加の悲劇をめぐる「違和感」と「やっぱり感」【宝泉薫】

2019年12月2日、映画「アナと雪の女王2」大ヒット記念のイベントでの神田沙也加さん。

 

 昨年もさまざまな死があった。田村正和や千葉真一といった名優、すぎやまこういちや橋田壽賀子などの巨匠、古賀稔彦のような名アスリート、あるいは心療内科クリニックを惨劇に陥れた放火殺人犯。ただ、有名人の悲劇という点で群を抜いていたのは神田沙也加の最期だろう。

 ミュージカル女優で、声優でもあった彼女は昨年1~3月期のアニメ「IDOLY PRIDE」(TOKYO MXなど)でアイドル・長瀬麻奈を演じた。とはいえ、その出演の大半は幽霊としてだ。初回に交通事故で亡くなるからである。

「麻奈の事故死はその後の報道により、今年最大のニュースになった」

 これは初回に担当マネージャーがつぶやく台詞だが、沙也加自身にも重なる気がしてしまう。もっとも、こちらは事故死ではない。「週刊文春」によれば、遺書もあり、交際中だった俳優・前山剛久宛てのものにはこんな言葉が綴られていたという。

「女性にあんまり強い言葉は使っちゃダメだよ。一緒に勝どきに住みたかった。2人で仲良く、子供を産んで育てたかったです。ただ心から愛してるよ」

 ちなみに、死因は外傷性ショック。15センチ程度しか開かない窓から6階分下に転落したことによるもので、解剖の結果、事件性はないことも発表された。

 そんな死ではあるが、最近は厚生労働省の意向もあり、メディアの報道にさまざまな配慮が施されている。そのひとつについて、雑誌「創」の篠田博之編集長はこういう指摘をした。

「異様なほど目に付いた『いのちの電話』の告知にしても、自殺か事故死か明示しないという報道にあれだけ付け加えてしまえば、別の意味合いを生じてしまう」

 これにはなるほどと感じる人も多いのではないか。テレビでもネットでも、最後にとってつけたように置かれるあの告知は、どこか思考停止による選択にも思われ、むしろ違和感を抱かせた。

 そして、筆者には別の違和感もある。沙也加の35年の人生に大きな影響を与えたであろう両親の生き方、とりわけ、母・松田聖子の自由奔放な男性遍歴について、スルーするなど、ぼかして報じるメディアが目立つことだ。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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