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跡継ぎ義信を殺した「後遺症」

武田信玄の遺言状 第2回

武田信玄像
 
覇王信長が最も恐れた武将・武田信玄。将軍足利義昭の求めに応じて上洛の軍を起こすが、その途上病に冒され、死の床につく。戦国きっての名将が、武田家の行く末を案じて遺した遺言には、乱世を生き抜く知恵が隠されていた――。

 信玄は風林火山の旗を都にたてる夢を捨てきれなかった。また、6年前に嫡子(ちゃくし)を自刃させた義信(よしのぶ)事件で、武田家内部の後遺症は重く、世継問題と領国経営の行方に深い危惧を抱いていた。

 ここに信玄は家老、家臣を集めて、様々な遺言を遺(のこ)したと『甲陽軍鑑(こうようぐんかん)』にある。

「予(よ)の望みは天下に旗を立て、号令することだったが、叶わぬようである。だが世間は予が生きていたら、きっと都に上ったであろうと思ってくれることが非常に嬉しい」

 と、叶わぬ夢にやせ我慢ともいえる心情を吐露した。(続く)

 

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楠戸 義昭

くすど よしあき

1940年和歌山県生まれ。立教大学社会学部を卒業後、毎日新聞社に入社。学芸部編集員を経て歴史作家に。著書に『戦国武将名言録』『この一冊でよくわかる!女城主・井伊直虎』(以上PHP文庫)、『吉田松陰「人を動かす天才」の言葉』『坂本龍馬の手紙 歴史を変えた「この一行」』(以上三笠書房・知的生きかた文庫)、『山本八重』『文、花の生涯』『井伊直虎と戦国の女城主たち』(以上河出文庫)ほか多数。


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