「イスラーム世界の価値観や行動原理は西欧的なものと全く異なっている」とまず認識せよ【中田考×平川克美】
「隣町珈琲」中田考新刊記念&アフガン人道支援チャリティ講演〈平川克美氏との特別対談〉
中田:トッドは確かに頭の切れる人ですが、この論評に関しては、的を外しています。
確かに「親への反発」のようなものが起こったことはその通りですが、結局アラブではその後全部失敗しているんです。
世界的な現象として、老人の支配に対する若者の反乱というのはある程度ありますが、それを過大に評価してしまうのは間違いでしょう。
■カブール無血開城の実態とは?
平川:今回タリバンはカブールに無血入城したわけですが、これは例がないことですよね。やはり現地の人たちがタリバンを支持していたところがあるんでしょうか?
中田:もちろんそうです。全面的な支持とまではいきませんが、ともかくその前のアメリカ傀儡政権があまりに酷かったこともあり、全体として見るならタリバンは国民から完全に支持されています。
実際、カブール以外の土地でもほとんど戦闘は起きておらず、多くの都市で無血入城になっていまして、しかもわずか約2ヶ月でカブールの占領まで終わっています。
実はカブールへの入城に関しては、タリバンはもう少し機が熟すのを待つつもりだったのですが、アメリカ軍や傀儡政権の要人何人かが逃げてしまって政府が崩壊してしまったんです。ですからむしろ大統領、副大統領に逃げられて取り残された旧政権の高官たちから「治安維持のためにカブールに入ってくれ」と頼まれて仕方なく入ったというのが実態だったようです。
平川:そうなんですか。傀儡政権の初代大統領だったカルザイは今どうしているんですか?
中田:カルザイはアフガニスタン国内に残っています。彼は大統領として来日して同志社大学で講演した時からタリバンとの和平を模索していました。旧共産主義政権の生き残り達はみんな逃げだしてしまいました。
平川:なるほど。アフガンのようなところでは、傀儡政権では統治できないということですね。ところで、2019年にペシャワール会の中村哲さんが殺されましたが、あれはどういったことなんでしょうか?
中田:あの事件のことは本当のことは分かりません。ただし、少なくとも「アフガニスタン・タリバン」すなわち現在のタリバン政権によるものでないことは確かです。
実はタリバンには、現在のタリバン政権とは別にパキスタン・タリバンというのがあって、この二つはまったくの別組織です。
殺したとすればパキスタン・タリバンであり、アフガニスタン・タリバンが関与してないことまでははっきりしています。
基本的には地元の利権問題だったんだろうと、アフガニスタンの事情に詳しい日本人から聞きましたが、これも本当のところは分かりません。
平川:タリバンは中村哲さんには感謝していたといいますね。
中田:「感謝していた」というか、現在ははっきりそういう立場をとっているということです。中村先生がご存命だった当時は現地のタリバンとは関係良好でしたが、中央執行部はあまり興味がなかったと思います。
ただし、田舎にもごく普通にタリバンがいるわけですが、中村先生はアメリカのNPOとは違って、自分たちの事務所を作る時にもまずモスクを作るなど、地元の生活・文化への貢献をやっていましたから、地元レベルではごく普通に仲良くしていました。
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