「イスラーム世界の価値観や行動原理は西欧的なものと全く異なっている」とまず認識せよ【中田考×平川克美】
「隣町珈琲」中田考新刊記念&アフガン人道支援チャリティ講演〈平川克美氏との特別対談〉
■チャンスを活かせなかったヨーロッパ、活かしたロシアと中国
平川:アフガニスタンには全く産業がない上、欧米から経済封鎖されているわけですよね。中国が援助を始めていますが、中国は多分いろんな思惑があってすり寄ってきているわけで、これからのアフガニスタンは大変ですよね。
中田:その通り、大変なんです。まず中国が先行していますが、ロシアもかなり入ってきています。『タリバン 復権の真実』にも書きましたが、一番最初にタリバンと交渉した外国は、実は日本なんです。我々を含めた同志社大学が2012年に招いたのが初めてですね。
当時もタリバンはテロ組織に認定されていましたから、当然本来日本に来ることはできなかった。それを裏道を使って呼んでしまったおかげで、はじめてタリバンが公式にメディアの前に出てきたのです。
平川:中田さんが金閣寺に案内したりしてましたよね。
中田:そうなんです。タリバンとお茶を飲んだの私だけだと思います(笑)。
同志社大学はタリバンを呼ぼうとしていることをアフガニスタン政府が聞きつけて、「タリバンが行くんだったら我々も呼んでくれ」と彼らのほうから言ってきて、彼らの対面が実現しました。
当時のアフガニスタン政府には、高等平和評議会というタリバンと和平をするための機関が設けられていました。ところがタリバンは「アメリカ軍の傀儡政権とは一切交渉しない」と言っていたので、この評議会は機能していなかったんです。
評議会のTOPは元ムジャーヒディーン政権の大統領だったラッバーニーでしたが、タリバンの使節を名乗る人間を迎え入れて交渉しようとしたところ、その人間が自爆してしまい、ラッバーニーは暗殺されてしまいました。
その時に同じく殺されかけて生き残った人間が、2012年に日本に来た高等和平評議会の事務局長だったスタネクザイです。「これでやっと、本当にタリバンの使節と会える。是非私も呼んでくれ」と彼らのほうから言ってきたわけです。
平川:すごい機会だったんですね。
中田:我々も、京都でスタネクザイがタリバンの代表と二人で話す機会を作ってあげたりしました。その後、ヨーロッパも我々を真似してそういう機会を作りましたが、彼らはタリバンを呼んでも結局自分たちの意見を押し付けようとするので失敗してしまいます。
2014年ぐらいからロシアがタリバンを招きはじめ、その次に中国が始めて、結局ヨーロッパは排除されてしまいました。
平川:なるほど。ヨーロッパとの関係で言えば、『タリバン 復権の真実』に十字軍の話が出てきますよね。「イスラームは十字軍からの攻撃を受けている」という感覚って今でもあるんですか?
中田:ビン・ラディンがそれを大きく広めたこともあり、その感情があることはあります。やっぱり被害者意識というか、負けている人間は僻みっぽくなりますから、そのせいもあるでしょうね。
(【質疑応答編】につづく)
構成:甲斐荘秀生
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