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話題沸騰!いまなぜ「おそ松さん」なのか

ダメ人間をダメなままで愛でる魅力

若い女性たちが『おそ松さん』にハマる理由とは

 今、『おそ松さん』が若い女性を中心として人気を集めている。表紙を飾った雑誌が発売後即完売して重版されたり、グッズが数多く販売されるなど、もはやちょっとした社会現象だ。少し前であれば、旧作を知っている世代でもなければ六つ子兄弟の名前を全部言えることなどなかっただろう。しかし、今や「推し松は誰か」(一番好きな六つ子は誰か)という話題で持ち上がるほどなのだ。
 『おそ松さん』とは、テレビ東京系列で深夜に放送されているアニメである。赤塚不二夫の『おそ松くん』を原作としているが、漫画版や旧アニメ版とは異なり、20代の若者になった六つ子が現代を舞台にドタバタ劇を繰り広げる姿が描かれている。
 本作品の魅力は何といっても六つ子それぞれのキャラクターにある。かつての『おそ松くん』では、六つ子のキャラクターの違いはほとんどなく、むしろイヤミの「シェーッ!」というギャグの印象が強かった。しかし本作品では、悪ノリに拍車がかかったおそ松、ナルシストなカラ松、ダウナーな一松、予測不能な行動を繰り返す十四松、オシャレであざといトド松、ツッコミ役のチョロ松というように、六つ子それぞれにしっかりとしたキャラ付けがされていて、見た目も見分けがつくように描き分けられている。一方、全員揃ってニートで、昼間からパチンコに通ったり、チビ太のおでん屋台で毎晩のようにツケで飲んだくれたりしているダメ人間である点は共通している。
 こういった、ダメな人間のダメっぷりがありのままに描かれているところにこそ、共感が集まるのだろう。若い女性たちからすると「ダメ男を養いたい」という気持ちがくすぐられるところもあるのかもしれない。
 チビ太が『進撃の巨人』の巨人のように巨大化して襲ってきたり、「デカパンマン」となったデカパンがパンツの中からかりんとうや金の球を取り出して困っている人を助けたりと、パロディや下ネタも多く、初回放送後に修正されてお蔵入りするほど際どい内容も多い。
 同時にほろっとさせられる人情噺も折り混ぜられている。ダメ人間のダメっぷりを笑いや人情を通して愛でるという点では、江戸時代の町人の風情を描いた落語と共通するところもあるかもしれない。
 時を隔てて変わった部分や変わらない本質を見つけたり、自分自身の変化に気付いたりもする。旧作に親しんだ世代からすると、そんな同窓会的な感覚に浸れる部分もあるのではないだろうか。
 

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大賀 祐樹

おおが ゆうき

1980年生まれ。博士(学術)。専門は思想史。

著書に『リチャード・ローティ 1931-2007 リベラル・アイロニストの思想』(藤原書店)、『希望の思想 プラグマティズム入門』 (筑摩選書) がある。


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