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あらかじめ失われた世界を再起動させるために【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」36

 

◆発見されるべきものは「現実」だ

 

 日本、いや世界そのものが「あらかじめ失われた」状態にあるとしても、安らかな滅びの夢を受け入れるかどうかはわれわれ次第。

 そして、すべてを再起動させる方法は存在するのです。

 つまり現実に帰還すること。

 

 コンセンサス・リアリティが解体された社会では、現実は「何でもあり」になります。

 だからこそ幸せな夢の中で滅びることも可能になるのですが、「何でもあり」の状況を逆手に取って、現実を再建することもできるはず。

 

 「真実などというものはない。すべてのことが許される」

 

 11世紀後半から12世紀前半の中東に生きた、ハサン・サッバーフという人物の言葉です。

 特定の現実認識が社会的に広く共有されている場合、これは「当該の現実認識をくつがえせば(=コンセンサス・リアリティを解体すれば)、すべてを何でもありにできる」ことを意味する。

 

 けれどもコンセンサス・リアリティが解体され、社会が「何でもあり」の嘘だらけになっている場合はどうか。

 ここには「何でもありの嘘を真面目に受け取る必要はない。社会規模で現実が解体されているのなら、その状況自体をくつがえして〈真の現実〉に帰還することも許される」という含みが生じるのです!

 

 慶應義塾大学名誉教授の堀茂樹先生からも、次のようなコメントをいただきました。

 

 美しい調和という「令和」本来の意味とは裏腹に、日本は濃霧に包まれている。コロナウイルス以前に、日本人の精神が何かに感染しているのではないか? 鬼才、佐藤健志氏がタブーを破り、戦後を呪縛する神話を解いて、われわれを現実発見へと導く。

 

 発見されるべきものは「現実」それ自体。

 さあ、あらかじめ失われた世界を再起動させようではありませんか。

 紅い女神と天使娘が、あなたをお待ちしています。

 

文:佐藤健志

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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