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【宮台真司】「ベビーカーでの電車内乗車」に、なぜ女性は男性より厳しい目を向けるのか?

「社会という荒野を生きる。」その真実と極意〈連載第5回〉

■仲間の視線に敏感になれというメッセージ

 

 まとめます。女性は、異性に対して反応する場合も、社会的な公共性に対して反応する場合も、「ウチらだったら、どうするか」と近隣同性集団からの視線を経由して、〝近しい仲間が「それもアリ」と承認してくれるだろうか〟と考えがちです。

 分かりやすく言えば、「自分や近しい仲間だったら、現にそうしたふるまいがありえるか」と考えて、「ありえない」ならばフィルタリングする。これに関してはいろんな研究があって、日本に限らず女性のそうした傾向が話題になっています

 では、なぜ女性がそうなのか。「生まれつき」ではなく、「そういう風に育った」可能性があります。「まわりの目に敏感にふるまえ」というメッセージに晒されて育って、自分が親になると同じメッセージを子供に与えるのです。そこから先は「鶏と卵」です。

 

■SNSでハブられることへの怯えの拡がり

 

 今のSNSが分かりやすいと思う。LINEを使ったイジメが知られているでしょう。同報でメッセージを送り合うLINEグループがあるけど、リアルで仲良くしているように見えて、その子だけ外したLINEグループでこっそり悪口を言う、みたいな。

 LINEグループでつながってても安心できません。別のLINEグループがこっそり作られ、そこで「クソじゃね」みたいな悪口を言われているかも。LINE上ではいくらでも簡単にグループを作れますからね。こうなれば視線に敏感にならざるをえません。

「Windows95」発売の1995年が事実上「インターネット元年」ですが、今世紀に入って、ネットでこっそり自分以外の友達がつながってる可能性に中高生の子たちが怯(おび)えるようになりました。いまでは小学校高学年にも怯えが拡がっています。

次のページ自分で自分のクビを締める残念な流れ

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CONTENTS

はじめに◉「社会という荒野を生きる。」とは何か

第一章◉なぜ安倍政権の暴走は止まらないのか

    ——対米ケツ舐め路線と愚昧な歴史観

◉天皇皇后両陛下がパラオ訪問に際し、安倍総理に伝えたかったこと

◉安倍総理が語る「国際協調主義に基づく積極的平和主義」の意味とは

◉戦後70年「安倍談話」に通じる中曽根元総理の無知蒙昧ぶりとは

◉盛り上がった安保法制反対デモと、議会制民主主義のゆくえ

◉安保法案の強行採決に見られる日本の民主主義の問題点とは

第二章◉脆弱になっていく国家・日本の構造とは

    ———感情が劣化したクソ保守とクソ左翼の大罪

◉なぜ三島由紀夫は愛国教育を徹底的に否定したのか

◉「沖縄本土復帰」の本当の常識と「沖縄基地問題」の本質とは

◉大震災後の復興過程で露わになった日本社会の「排除の構造」とは

◉除染土処理の「中間貯蔵施設」建設計画はすでに破綻している!? 

◉なぜ自民党はテレ朝・NHKの放送番組に突然介入してきたのか

◉憲法学の大家・奥平康弘先生から学んだ「憲法とは何か」について

◉広島・長崎原爆投下から70年と川内原発再稼働の偶然性とは

第三章◉空洞化する社会で人はどこへ行くのか

    ———中間集団の消失と承認欲求のゆくえ

◉ISILのような非合法テロ組織に、なぜ世界中から人が集まるのか

◉ドローン少年の逮捕とネット配信に夢中になる人たちの欲望とは

◉元少年Aの手記『絶歌』の出版はいったい何が問題なのか

◉地下鉄サリン事件から20年。1995年が暗示していたこととは

◉「お猿のシャーロット騒動」と日本のインチキ忖度社会とは

◉戦後日本を代表する思想家・鶴見俊輔氏が残したものとは何か

第四章◉「明日は我が身」の時代を生き残るために

    ———性愛、仕事、教育で何を守り、何を捨てるのか

◉なぜ日本では夫婦のセックスレスが増加し続けているのか

◉労働者を使い尽くすブラック企業はなぜなくならないのか

◉「仕事よりプライベート優先」の新入社員が増えたのはなぜか

◉「すべての女性が輝く社会づくり」は政府の暇つぶし政策なのか

◉ISILの処刑映像をあなたは子供に見せられますか

◉青山学院大学学園祭の「ヘビメタ禁止」騒動は何が問題だったのか

◉「ベビーカーでの電車内乗車」に、なぜ女性は男性より厳しい目を向けるのか

以上「目次」より

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宮台 真司

みやだい しんじ

社会学者

1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。社会学博士。1995年からTBSラジオ『荒川強啓 デイ・キャッチ!』の金曜コメンテーターを務める。社会学的知見をもとに、ニュースや事件を読み解き、解説する内容が好評を得ている。主な著書に『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社、ちくま文庫)、『正義から享楽へ 映画は近代の幻を暴く』(bluePrint)、『子育て指南書 ウンコのおじさん』(共著、ジャパンマシニスト社)、『どうすれば愛しあえるの 幸せな性愛のヒント』(二村ヒトシとの共著、KKベストセラーズ)、『社会という荒野を生きる。』(KKベストセラーズ)、『崩壊を加速させよ 「社会」が沈んで「世界」が浮上する』(bluePrint)、『大人のための「性教育」 (おそい・はやい・ひくい・たかい No.112) 』(共著、ジャパンマシニスト社)など著書多数。

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