経営者を目指すなら、『論語』や『老子』で正しい考え方を学べ!
「社長になれる人、なれない人」(6)
京セラや第二電電を創業し、日本航空(JAL)を再建した経営者の稲盛和夫さんは、成功は「考え方×能力×熱意」によって得られるとおっしゃっています。人生や仕事の成果は、この3つの要素の「掛け算」によって得られるもので、決して「足し算」ではないということです。
能力と熱意はそれぞれ0点から100点まで点数をつけることができるとすると、掛け算なので、たとえ能力があっても熱意が乏しければ、いい結果が出ません。反対に能力が低くても、そのことを自覚して熱意をもって仕事や人生に取り組めば、能力に恵まれた人よりもはるかにいい結果を得ることができる。稲盛さんはそう説いています。
そして、3つの要素の中で最も大事なのが「考え方」です。この考え方次第で、人生は決まってしまうといっても過言ではありません。稲盛さんによると、考え方というのは能力や熱意とは違い、マイナス100点からプラス100点までより幅広い点数をつけることができる、としています。つまり、能力や熱意が大いにあったとしても、考え方がマイナスなら掛け算すると結果も大きなマイナスにしかならない、ということです。間違った考え方は、マイナスの結果しかもたらしません。
稲盛さんは「盛和塾(せいわじゅく)」という経営塾を主宰されていますが、日本国内だけでもメンバーが8000人以上だと言われ、海外では中国を代表する実業家であるアリババCEOのジャック・マー氏も稲盛さんを師と仰いでいるそうです。その盛和塾で何を教えているのかというと、それは考え方なのです。経営のテクニックやスキルではなく、「正しい考え方」。
人類の長い歴史の中で、多くの人たちが正しいとしてきたことを教えているのです。稲盛さんは得度(とくど)されているので、ベースとなっているのは仏教です。
経営において考え方さえ正しければ、あとは何とかなります。テクニックやスキルはおカネで買うことができるし、優れた部下に代替させることもできます。しかし、考え方はそうはいきません。いくら正しい考え方を持った社員を雇っても、社長自身が正しい考え方を持たなければ、あっという間に経営が立ち行かなくなります。
ひと頃のITバブルでは、若手のベンチャー社長が雨後の筍のように誕生しました。しかし、中にはカネに飽かせたマネーゲームや派手なライフスタイルに興じ、最終的には会社を潰したり、逮捕されて刑務所に送られたりした人もいました。彼らに共通していたのは、能力は高かったかもしれませんが、過去に学ばず、正しい考え方を身につけることができなかったということです。
人類の長い歴史の中で、多くの人たちが正しいとしてきたことを学ぶ
社長を目指すのなら、まずはベースとして正しい考え方を身につけるべきです。それには何千年もの間、人々が正しいと考えてきたことを勉強すればいい。儒教や仏教などが、それです。
私は380社ほどのオーナー経営者たちを集め、セミナーを開催していますが、必ず言っているのが「『論語』や『老子』を読んでください。それが難しければ、稲盛和夫さんや松下幸之助さんの本を読んでください」ということ。普段の経営のみならず、生き方が大きく違ってくるからです。正しい考え方は、一朝一夕では身につきません。ですから、若いうちから正しい考え方を学ぶにこしたことはありませんが、気づいた時からコツコツと学ぶことです。
私は、松下幸之助さんの『道をひらく』という本を毎晩、寝る前に必ず読むようにしています。松下さんの著書に初めて触れたのは、それまで勤務してきた銀行を辞め、小さなコンサルティイング会社で働き始めた時でした。松下さんの本を最初に読み始めた頃は、経営の技術についての内容を期待していたのですが、いくら読んでもそんなものはほとんど出てこない。
結局分かったのは、経営で一番大事なのは正しい考え方を持つということでした。もう25年くらい読み続けていますが、自分のスタンスをブレさせないという意味で、とても大事な習慣になっています。