行動制限は社会を不健康にするぞ!【佐藤健志】
佐藤健志の「令和の真相」40
◆豊かさと健康は切り離せない
答えは単純明快。
行動制限によって生じる「健康への被害」にたいする抵抗力を強めるのです。
ワクチンのブースター接種と同じこと。
これは簡単にできます。
財政出動によって、経済被害を補償すればよろしい。
社会活動に制約が生じていても、社会活動が充実している状態と同じ、ないしそれに近い金銭が得られれば、「たんに病気にかかっていない状態」から「健康な状態」へと昇格してゆけるではありませんか。
経済被害の補償は、健康の補填としての役割を持つのです!
ところが政府は、ブースター接種の前倒し実施には熱心な一方、経済被害にたいする補償を拡充させることには消極的な模様。
経済被害も「健康への被害」ですから、これではコロナ対策を十分に行っているとは言えません。
ついでにパンデミックが終息、つまり完全に収まるまでは、行動制限がかかっていなくとも、収入や売上げの減少が生じやすい。
言い換えれば「ブースター補償」も、まん延防止等重点措置、さらには緊急事態宣言の適用とは無関係に行うべきもの。
「豊かさ」を意味する英語「wealth」が、「健康」を意味する「health」と語源的に深く関連しているのは、決して偶然ではありません。
同時に「health」は、「全体」を意味する「whole」とも深くつながった言葉。
豊かさと健康は切り離すことができず、かつ社会全体において成立させることが重要なのです。
国家、とりわけ共和国を指す英語に「commonwealth」(コモンウェルス)があるのは、関連して意味深長。
「Common」は「共通の」「公共の」「一般の」といった語義の言葉ですが、豊かさが共有されてこそ、社会はうまく機能するのです。
そしてこれは、健康も共有されることにひとしい。
わが国でコロナの抑え込みに最も成功してきた県の一つは岩手県ですが、同県の達増拓也知事が、かつて「岩手コモンウェルス構想」を提唱したのも、やはり偶然ではないでしょう。
重点措置を実施していないせいか、最近は感染者が増えぎみなものの、直近1週間の人口10万人あたり感染者数を見ると、島根県・鳥取県とともに今なお最少クラス。
そしてコロナ対策をめぐる達増知事の考え方は、『感染の令和』で論じたことと多分に重なるのです。
感染被害と経済被害の間にトレードオフの関係しか存在しないと思い込むことの問題も、ずばり「health」と「wealth」を切り離してしまう点にあります。
「Health」のために「wealth」を犠牲にするか(=行動制限をかけて、経済被害の拡大に耐える)、「wealth」のために「health」を犠牲にするか(=行動制限をかけず、感染被害の拡大に耐える)、どちらかだという話になる。
ところが豊かさと健康は、そもそも切り離せない!
これでコモンウェルスが維持されるはずはありません。
発想を切り替えないかぎり、われわれは社会全体として、豊かさと健康をともに失うことになるのです。
文:佐藤健志