「一流」のビジネスマンは仕事の本質を知る
「社長になれる人、なれない人」(7)
企業では、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)という教育制度があります。現場での実務を通して、仕事に必要な知識や技術などを学んでいくというものですが、ワンランク上を目指すビジネスマンとしては不十分です。
なぜなら、OJTで習得できるのは目先の仕事を問題なくこなせる能力というだけだからです。言い方は悪いですが、一人前の仕事ができる程度。ましてや、若い社員の仕事はそれほど難しいものではありません。
社長を目指すなら一人前ではなく、一流の社員にならなければなりません。OJTでは一人前になることはできても、一流にはなれないのです。
OJTでマスターできる能力には限界があります。日常の業務をこなしているだけでは、本当の仕事の能力は上がりません。日常業務をこなす効率が上がるだけで、そこで習得したものはポストが上がれば不要になってしまうことも多いのです。つまり、OJTでは仕事の本質を理解することはできません。
仕事の本質を理解しているか、していないかでは、同じ仕事をしても明確な差がつきます。仕事の本質を理解するには、やはり学ぶことや勉強をすることが何よりも必要になってきます。
電気技術者なら電気工学などの勉強をすべきだし、経理の人なら簿記や財務諸表論をきちんと勉強すべきです。資格を取れれば、なお良いでしょう。もちろん資格がなくても、業務に支障を来さないかもしれません。しかし、仕事の本質を知れば、退屈になりがちなルーチンワークにも面白味が出てくるし、仕事に応用も利き、不測の事態にも対応できるようになります。
本質を知ることは、自身の仕事のレベルを上げてくれるだけでなく、将来的にも必ず役に立つはずです。
+αの知識を得ようとするなら、
なおさら勉強することが必要
すぐに役に立つことは、目の前の仕事の深いことを学ぶことです。
どんな仕事にも必ず深いことがあります。それを学べば、仕事に応用が効きますから、人よりも仕事ができるようになります。そうすれば、仕事が余計に楽しくなりますし、もちろん、周りからの評価も違ってきます。そのためには、目の前の仕事の深い部分についての本を読んだり、講習に出かけたりすることが必要です。それは、OJTでは得られないことです。また、そのことは、何についても深いことを学ぶ訓練にもなります。
さらに将来、社長を目指す人には経営の勉強が必要になってきます。経営には経済や会計、マーケティングなどの知識が求められます。これらの知識は早い時期から勉強しておくに越したことはありません。しかし、これらは現在の業務に関わっていない限り、実務を通して習得することは不可能ですし、会社ではすぐに学べるということはありません。
特に、若手のうちでは無理でしょう。したがって、プラスアルファの知識を得ようとするなら、週に1時間でも2時間でも良いので勉強する習慣を身につけることが大事です。
夜間のビジネススクールに通うというのもいいかもしれません。私は経営コンサルタントとして会計を活用する機会が多いのですが、これはほとんど独学で学んだものです。マクロ経済の知識も、ほぼ独学で身につけました。銀行員時代、通常の業務を行うだけであれば、これらの知識は必要ありませんでした。しかし、自ら学ぼうとしたからこそ、身につけることができたのです。
『論語』に「学ぶに如ず」という言葉があります。物の道理を知るためには、漠然とただ考えるよりも勉強して先人の知恵を学ぶ方が役に立つ、という意味です。能力を伸ばすためには、学ぶ姿勢があるかどうかがとても大事なのです。
ただ、勉強熱心なあまり、目の前の仕事がおろそかになってしまわないよう気をつけたいもの。現在携わっている仕事を一生懸命頑張って成果を出さなければ、社長はおろか出世の可能性すらありません。