Scene.18 どかどかうるさいロックンロール本屋! |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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Scene.18 どかどかうるさいロックンロール本屋!

高円寺文庫センター物語⑱

「どうも、ありがとうございました」

間髪入れずに、クロちゃんが突っ込んできた。

「店長、いまのお客さんは草野マサムネさんですよ!」

「ゲゲゲ、スピッツのだよな! 『ロビンソン』大好きだぜ」

「完璧にオーラ、消していましたね」

ところが、やはりなにか感じるものがあった。背は低めだが大きく見えた彼を、一葉の写真のように思い出す。

対照的にオーラが出まくりだったのが、いまや「世界の村上隆」二度のご来店を忘れない。

水木しげる先生の著作を中心に、大人買い。二度目はお付きの若者がいて、レジに運ばれた本は自宅にお届けの手続きを取られていた。

営業的には「おいしいお客さん」なんだが、好奇心旺盛のボクらは「村上さんって、なにものなの?!」

この当時、名前からウィキペディアで検索ができる便利な時代ではなかった。レジ処理中にトークを突っ込んで、トーク・イベントでもできていたらご機嫌に素敵なアーティストだったのにな。

そう言えば、HIROMIX!

内山くんの友達で、高円寺が生まれ育ちの女の子写真家。ショーウィンドーを使って「HIROMIX写真展」をしたのは、ひろみちゃんと呼んでいた世界に羽ばたくまだまだ前の頃だった。

高校卒業の95年。キャノン主催の写真コンテストで、優秀賞と同年のグランプリも取る活躍。蜷川実花とともに、90年代ガーリーフォトブームの火付け役になっていた。

開花した才能は、高円寺を離れて行くんだよな・・・・。

 

「店長、まだ食べよると! あ、かき揚げ蕎麦ね!」

「内山さんには、さっき皿うどん風なのを出したでしょ」

「ケケケ、内山くん。話がチャンポンやねぇ~」

「なんでんかんでんよか!

写真屋の、矢沢の永ちゃん大好き集配のにいちゃんばい。お客さんが取りに来ない写真が、溜まってるのどぎゃんねって言っちょるけんが・・・・」

ニューバーグ裏メニューランチもそこそこに、駆け戻る。フィルムの時代は写真店だけじゃなく、本屋などもプリントにするサービスをしていた。

「店長、ランチ中にすいません。

年末も近いので、今年のうちに滞納の写真は再連絡か返品か処分を考えられたらどうっすか?」

「取りに来ない、この束ね。連絡しようにも、電話がないって方なんだよね」

「では、私が立ち会いますので開封しませんか? 写真に連絡先のヒントがあるケースもありますから」

さすが、そちらもプロだなっと。DPEの袋を開けてみれば・・・・。そこには高円寺的にいちゃんやねえちゃんが、半裸や全裸で戯れているシーン!

「あんれま! こんなの現像しちゃっていいの?!」

「ヤバいところは、巧い具合に写ってないっすもんね。現像基準の公序良俗にはOKってことになるんすよね・・・・これ」

仕事柄、みんなにも見せて写ってる顔に見覚えあるか確認。手ごたえなしで返品させて貰ったけど、高円寺の若いのやるなぁ~アートなのか趣味なのか?!

 

新宿は花園神社のお酉さまに、久しぶりにやって来た。隣接する小学校は父親の母校で、当時は四谷第五尋常小学校だったらしい。戦災で焼け出されて、池袋に移転したそうだが角筈と呼ばれたこの一帯は不思議に落ち着く。

さて、今日のメインは見世物小屋なのだ!

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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