Scene.23 本屋は今日も、てんてこ舞い!
高円寺文庫センター物語㉓
古屋兎丸さん。この当時、30代前半。長身痩躯の優しい面立ち、こりゃ作品の世界だけじゃなくて女性ファンも付くよな・・・・。
「兎丸さん。お持ちいただいた原画は、タッチが気になるんですけど?」
「店長さん。これは木の板にロットリングで描いているんです」
幾たびか、漫画家さんのイベントを手掛けてわかったことがある。彼ら漫画家さんたちは、自分に似せて自画像のようにメインキャラクターを描いているなってこと。深読みすれば、思想でさえも自分の世界で完結してしまう。
イベントを通して数多の才能に触れるうちに気がついた。さらに伸びる才能は、現状に留まらないってことに!
自らを切り開ける才能は、現状に立ち止っていることはないんだな・・・・そうだ、ボクらもそうだった。忙しいという漢字を振り分ければ心を亡くすとなる。『書を捨てよ、町に出よう』ではなく、『書を持って、町に出よう』と、突っ走りつつ、自省すべきと考えさせられた。
「店長。ようやく行列のラストが見えました。95名のお客さんです」
「店長。リットーミュージックのハットリさんが、いらっしゃいましたよ」
「あ、タツロクさん。折角、休日のところを来ていただいているのにすいません!
とにかくハヤカワ文庫の『U-571』を読んじゃって、映画の『U-571』を観るか。映画を観てから文庫を読むかですね」
「店長がそう言うなら、いま文庫を買って映画はこれから観に行きますよ!」
「新宿文化シネマですよ!
はい、レジお願いします。タツロクさん、文庫のお買い上げ」
「ハットリちゃん! 先日は清志郎さんの握手会助っ人、ありがとうございました」
「はい! こちらこそ、楽しませてもらいましたもん。日頃から、りえさんや皆さんに愚痴を聞いてもらっている恩返しです!
ところで、先日ご案内した新刊の『THE BEATLES アンソロジー』の件ですけど」
「考えてありますよ!
音楽棚のエンド台、平台に全面展開で行きましょうよ。見本誌は、中を開いて展示するってのはどうかな?!」
「え! そこまで、やってもらえるんですか?」
「だってさ、ビートルズ世代っていったらボクみたいなオヤジ世代でしょ。文庫センターじゃ多くないから、販促先のメインは音楽業界の関係者だよね。
展開期間中は、ビートルズのCDをかけまくりで煽っちゃうから!」
「本体価格6800円と高いので、ホントに助かります。店長も、買ってくれるんですよね?!」
「12月のボーナスがどうなるか・・・・いや、買いますよ!」
「え! 矢沢永吉?!」
「ん? 矢沢の永ちゃんのこと!」
さすがロックンローラー。内山くん、ガンガン突っ込んで来るよな!
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