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Scene.27 まだまだ、夢の途中だぜ!

高円寺文庫センター物語㉗

「店長。表情が冴えとらんけんが、社長との年初のミーティングは絞られたと?」

「いやいや、そんなことないよ」

「店長・・・・内山さんとの会話で、九州弁にならないのはローテンション。社長に、売上のことを突っ込まれまくったんでしょ?」

「社長は優しいからさぁ、絞られるとか怒られるとかないけどな。ただ、見せられる成績低下の数字はリアルじゃん!

それもあるけど、申し訳なかったのがさ、『AKIRA Tシャツ』の後始末の件なんだよ」

「あ、3600円くらいで買切り商品なのに英断したヤツやね」

「単行本の『AKIRA』がさ、とにかくめちゃくちゃ売れたから! Tシャツも間違いなく売れると思ったんだよな・・・・。

発売時にドカンと売って、関東圏で買いそびれたお客さんが来てくれて、残った数枚をレア・アイテムで売っていく腹積もりだったんだけどな」

「いくら大友さんのTシャツでも、3800円で6種類を各50枚は入れ過ぎやったか?!」

AKIRA Tシャツを、買ったもののもったいなくていまだに袖も通さずに未開封のまま!いまヤフオクで高値が付いているのには驚いた!

「そうだな、大友さんが好き過ぎてクールな判断を誤った。

それを、社長は地元の西荻で朝市とかで売り続けて完売したよって話だったの」

「ホームページにアップしても、あまり電話注文も入らなかったですもんね。やっぱりAKIRAに惹かれるお客さんも、まだパソコンを持ってないんでしょうね」

「社長も、その点は指摘されていた。とにかく店長としてのミスだったわ!

みんなに買い切り商品の機微を勉強してもらっといて、自分が価格と数量を勘案するとこでミスちゃったもんな」

「それは、よけいに社長の優しさが身に堪えたと思うんですけど。こんな時こそ、いつも店長が言っているように『さあ、次へ行こう!』じゃないんですか?!」

「さわっちょに、一本取られた!

でもさ、カリスマ店長とか言われたってプライドもないから。ホントに、みんなに支えられていると思っているよ。

親は初めから親じゃなくて、子供に向き合って育てられて親になって行くのと一緒だと思っているからさ」

 

「じゃ、みんな!

今年最初のミーティング、4丁目カフェに行くぞ!」

「なんね、中野サンプラザボウリングの話はなかよ!

バン練で行けなかったけんが、そんな時に店長がターキー出すって気分悪か」

本文では、この全文を書き込んでみました。実際の紙面はこんな感じです。小さいよねぇ・・・・

「内山くん、バンドの練習は真面目にやってるよなぁ・・・・

去年の売上げ報告に入る前に、これ見てくれるか。『ダカーポ』からの依頼で書いた『旬の本』のコーナーの浅草キッド『お笑い 男の星座』こんなにちっちゃい記事だから、コピーすんのもったいなくて読み上げるからね。

『本屋の正月はつらい。単行本はみんな20世紀の遺産で商い中。1月も半ばを過ぎて本格的に新刊が入荷してきた。しかもいきなり文庫センター向きの凄いヤツ。浅草キッドの「お笑い 男の星座」だ。兵隊の位でいえば大将なんだな。

1冊目はA氏がお買い上げ。幸先がよい。A氏とは、秘かにサブカル本のアンテナにしている感度良好のお客様である。彼が買った本は売れる。はずれもたまにあるけど。

水道橋博士がタレント本は売れないと嘆いていたとか。申し訳ない、文庫センターでのメガヒットは世間では売れないのです。これ鉄則。

ただ今回は匂う。ジンクスはついえ去るか否か』」

「わかったばい、店長!

それは浅草キッドのサイン会を、出来ないかってアッピールね。先月出てから、めっちゃ売れとるけんが次の新刊でサイン会したかねぇ」

「さすが、内山くん!

そうなんだよ、みんな。これを覚えておいて、版元さんにアッピールしといてな」

「わかりました。

芸人さん方面にも、イベントの幅を広げられたらいいですよね」

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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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