素晴らしき一週間が終わる
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記<8>
「連投いけそうですか?」コーチの一言で気付いたトライアウトの意義
言われた言葉「やる気、見せないと」
加藤コーチはちょっとビックリしたような、そんな顔をしていた気がする。突然のことでちゃんと覚えていないのだけれど……。
「気持ちがあれば大丈夫ですよ。プロでやるんだったら、やる気、見せないと」
そんなふうに返された。そこで僕ははっとした。
「そうだ、ここはトライアウトの場だ。真剣勝負の場なんだ。みんな必死にやっている。俺は体の心配半分、楽しい半分できていたけれど、もっとアピールしなきゃだめだ」
もちろん、野球を楽しむこと自体は悪いことではなかったと思う。でも、体の心配があったり、みんなと夢を共有できたりと、良くも悪くも自分のなかでどこかアピールの場であることを忘れていた部分があった。
きっと加藤コーチはそれを見透かしていた。
プロになりたいという必死な姿も見てみたい。
そんなメッセージだったんじゃないか、と勝手に解釈し、感謝している。
そして、この一言は僕に勇気も与えてくれた。
「あれ? もしかしたら少しは注目してもらえているのかもしれないぞ」
そんな感覚だ。
成績は悪くなかった。そこには自負があった。一方で若い選手と比べれば、球速や体力といった部分には差があるとも感じていた。受かるか受からないか、といえば願望で受かったらいいな、としか言えない現実があった。
「見てもらっていた」ことはそんな僕に少し、希望をくれた。
ついに最終戦が始まった。