Scene.28 夜更かし本屋はおもしろい!
高円寺文庫センター物語㉘
「店長。いつも行っている蔵前のオモチャ問屋さんに電話したら、今月で店じまいですって!」
「アップカンパニーのこと?!
そこって、清志郎さんやJB=ジェームズ・ブラウンのフィギュアを仕入れていた問屋さんじゃないの?!」
「もう一軒、扱っていた問屋さんがあったと思うんですけど・・・・
掛値がどうだったか、なんて言っている場合じゃないですよね」
「そっさ、リュックとキャリーバッグの総動員で買占めに行こう!
うちら的にありがたい問屋さんが潰れるだなんて、なんか逆風が吹いてきた感じだなぁ・・・・『いやな感じ』by 高見順。」
「そのギャグって、店長の職業病じゃないですか?」
「職業病か・・・・
ひと昔前は、混雑するレジの打ち過ぎで頚腕。紙でもまとまりゃ重いから、腰痛ってのが本屋の二大疾病っていってたんだけどな。
POSレジ導入、ピッピ! で、頚腕は聞かなくなったけどさ、腰痛の見本はここにいるぜ!」
「あ、木田さん。いらっしゃいませ!
先日話していた、都築響一さんのイベントが決まったんですよ!」
「店長。50になって、ボケたのか?!
俺とはいっさい、そんな話はしてない。が、そのイベントは気になる! 酔っぱらって夜中に来たらよ、ラブホテルって題字が見えて買った本。翌日、見たら都築さんの新刊だったわ!」
「ありがとうございます。
それって、アスペクトのシリーズ本『ストリート・デザイン・ファイル』のNO.17『ラブホテル・消えゆく愛の空間学』ですよね」
「隠微な世界へのインビテーション!
秘宝館とともに、これも世界文化遺産的な孤高の現代日本文化ラブホテル。体験したなら、貴重な体験。
部屋中が鏡張りの部屋、居間からベッドへは朱塗りの太鼓橋がある部屋、蓋を開けた真珠貝のなかにベッドがある部屋、檻があり鞭などの責め具が用意された部屋等々と、日常生活ではありえない空間の中で性を楽しもうと創造されたインテリアに目を見張る!
道祖神から春画、秘宝館にラブホテルと日本人は性に対する視線が比類ない独自性を持っていた・・・過去形である。
新風営法で、ワンダーランドな部屋は駆逐されビジネスホテルと変わりゆく・・・やはり、変わりつつあると「危惧」するのは日本人の心である。
『要求を超えた、無用無意味の領域に踏み込んでいくのがアート』とは、著者の都築響一!」
「木田さん、一気に語りつくしましたね!
そうなんですよ。ラブホテルや霊柩車と廃墟などに、真剣に向き合う方には肩入れしたくなるんです。
ほかに6巻目の『ピンク映画のポスター世界』や、14巻の『香港式・冥土のみやげ』もいかがですか?」
「喋り倒して、顎が疲れたから帰る!」
「おーい!
その、都築響一ビデオトーク・ライブな。席を、ふたつ取っとけ!」
「木田さ~ん、前売り券を買ってくださいよ!
って、行っちゃったよ・・・・」
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