ウクライナ侵攻、ロシアはどこまで〈悪〉なのか【佐藤健志】
佐藤健志の「令和の真相」41
ウクライナ侵攻、ロシアはどこまで〈悪〉なのか
◆侵攻の経緯を振り返る
ロシアのウクライナ侵攻が始まって、もうすぐ3ヶ月となります。
当初は首都キーウ(キエフ)があっさり攻め落とされたあげく、ウォロディミル・ゼレンスキー政権が倒され、親ロシアの傀儡(かいらい)政権にすげ替えられて終わるのではないかという見方が強かった。
侵攻が始まったのは2月24日ですが、3月はじめの時点では、ゼレンスキーはじめ同国政府首脳をポーランドかルーマニアに脱出させ、亡命政府を樹立させてはどうかという案が、アメリカ政府などで内密に検討されていたとまで言われるほど。
しかしゼレンスキーは持ちこたえる。
キーウにとどまったまま、欧州議会を皮切りに、英国、カナダ、アメリカ、ドイツ、イタリア、日本、フランスなど、各国議会で立て続けにビデオ演説を行い、英雄として賞賛されます。
わが国の国会演説と、フランス議会での演説など、同じ3月23日になされました。
他方、ロシアの作戦も予想されたようには進まない。
ウクライナ自体が持ちこたえたのです。
3月末になると、キーウ周辺からロシア軍の撤退が始まり、制圧に失敗したことは明らかとなりました。
4月以後、ロシアの攻撃はウクライナ東部、いわゆるドンバス地方や、黒海(北東部の内海「アゾフ海」を含む)に面した南部に集中するものの、黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が、ウクライナの対艦ミサイル攻撃で沈没したことが示すとおり、ここでも苦戦を強いられます。
けれどもウラジーミル・プーチン大統領は停戦に応じず、侵攻を続ける姿勢を見せている。
5月9日、対独戦勝記念日の演説でも、「われわれはいまだドンバスのために、ロシアの安全のために戦っている」とぶち上げました。
状況次第では、化学兵器や戦術核兵器の使用に踏み切るのではないかという推測もあり、事態は予断を許しません。
そうでなくとも今回の侵攻と、それに対応したロシアへの制裁は、世界経済に大きな影響を与えています。
とくに懸念されるのが、食糧とエネルギー価格の高騰。
IMF(国際通貨基金)は4月19日、今年の世界経済の成長率予測を3.6%に下方修正しました。
1月時点では4.4%でしたから、大きくブレーキがかかった形です。
さらに顛末いかんでは、台湾や尖閣諸島など、日本周辺の国際情勢にも大きな影響が生じるかも知れません。
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