ウクライナ侵攻、ロシアはどこまで〈悪〉なのか【佐藤健志】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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ウクライナ侵攻、ロシアはどこまで〈悪〉なのか【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」41

5月15日、ロシアによる侵攻が続くウクライナのゼレンスキー大統領は新たな動画を公開し、ロシア軍の動きは「ロシアは侵攻が行き詰まりを見せていることをまだ認めようとしない。作戦はすでに失敗している」などと指摘した。

 ◆反ロシアの情報戦にまで合意

 そうです。

 NATOの正式な一員でこそないものの、20206月いらい、ウクライナは「高次機会パートナー」として、いわば準会員に迎えられているのです。

 ウクライナのマルチメディア・プラットフォーム「UKRINFORM」によれば、これによって可能になる事柄は以下の通り。

 

(1)NATOの作戦立案参加

(2)集団安全保障を含む全てのNATOの訓練へのアクセス

(3)前線での経験、部隊・機器の優先的認証へのアクセス

(4)NATO本部・指揮機構でのポスト就任

(5)NATO加盟国とのインテリジェンス(注:情報)の深化した迅速な交換

(6)黒海海上での安全維持協力の強化

(7)サイバー脅威、国際テロ、組織犯罪への共同対処

 

 駄目押しと言うべきか、憲章の第3節第4項にはこうある。

 

 【アメリカとウクライナは、ウクライナの歴史が広範に周知されるよう、今後も密接に協力することをめざす。これには1932年から1933年にかけて生じたホロドモールをはじめ、過去にウクライナの内部で生じた残虐行為、および過去に外部からウクライナに加えられた残虐行為をめぐる人々の関心を高めることが含まれる】

 

 ホロドモールとは、ヨシフ・スターリン政権下のソ連各地で起きた大飢饉のこと。

 ウクライナ(当時、同国はソ連の一部でした)の被害がとくに甚大だったのですが、じつはこれ、スターリンが意図的に引き起こしたか、少なくとも積極的に対処しようとしなかったことによる人災と言われます。

 要するにアメリカとウクライナで、反ロシアの情報戦、ないし「歴史戦」をやると宣言しているのですぞ。

 

 「平和に暮らしていたウクライナに、悪いロシアがいきなり攻め込んできた」という図式が成り立たないのは、もはや明らかでしょう。

 ──ウクライナを使ってNATOの東方拡大をもくろみ、ロシアを追い詰めようと画策したアメリカ(およびEU)こそ真の問題だ!

 そんなふうに叫びたくなる人も出てくるかも知れません。

 

 ところがお立ち会い。

 そうとも言えないのです。

 この先は次回、お話ししましょう。

 

文:佐藤健志

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【佐藤健志氏によるオンライン読書会のお知らせ】

 

 ウクライナ侵攻と関連して、Zoomによるオンライン読書会を下記の通り開催します。

 「強兵なくして主権なし〜ロシアの視点を理解して、日本が取るべき戦略をつかめ」

 

 ◆開催日時:2022年6月18日(土)14:00〜16:00

     講義  14:00〜15:30

     Q&A 15:40〜16:00

※質問多数の場合、Q&Aコーナーの時間を延長します。また参加者全員に録画アーカイブを配信しますので、リアルタイムでご参加いただけない方も安心してお申し込み下さい。

 

解説書籍:『「帝国」ロシアの地政学』(小泉悠、東京堂出版、2019年)

 

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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