石原慎太郎や橋下徹の暴言は、言論の自由の範囲内なのか?【適菜収】
【隔週連載】だから何度も言ったのに 第18回
■公道にクソをまき散らす自由はない
先日、私のツイッターのbot(定期的に自動ツイートするシステム)にリプがたくさん集まっていた。これは石原慎太郎について述べたもの。
《石原慎太郎「これ(東日本大震災の津波)はやっぱり天罰だと思う」「(能登半島地震について)震度6の地震がきたって、ああいう田舎ならいい」「物騒なたとえ話だが、北朝鮮がノドン何号かを京都へ撃ち込んでくれれば、この社会も少しはピリッとする」こういう発言、許してはいけないよね》
多くの人は私と同様に石原を批判していたが、一部のネトウヨみたいなのが「言論の自由だ」などと反発していた。こういう奴に限って、石原と同じことを蓮舫や辻元清美が言ったら顔を真っ赤にして怒り狂うのだろうが、それ以前に、「田舎なら地震が来てもいい」というのは、言論ではない。表現の自由は大切だが、公道にクソをまき散らす自由はない。
*
表現の自由をはき違えてはならない。批判すべきはたとえば次のような動きである。衆院法務委員会はインターネット上の誹謗中傷対策として「侮辱罪」を厳罰化することを柱とする刑法改正案を、自民、公明両党などの賛成多数で可決(5月18日)。現在は拘留と科料しかない侮辱罪の法定刑に、1年以下の懲役と禁錮、30万円以下の罰金を追加するとのこと。法的根拠も曖昧で、恣意的な運用を防ぐ担保もない。法案改正の目的は権力批判の言論を萎縮させることだろう。
報道によると、侮辱罪は1875(明治8)年に布告された讒謗律に由来する。国民の名誉より政府の官吏らを守ることを重視して運用され、新聞紙条例とともに、当時の自由民権運動を弾圧した。
改正案の審議では「閣僚を侮辱した人は逮捕される可能性があるか」との質問に、二之湯智国家公安委員長は当初、「ありません」と答えたが、次第に「逮捕される可能性は残っている」と答弁を変更。日本のディストピア化も最終段階に入ってきた。
*
ドイツの社会心理学者エーリヒ・フロムは『自由からの逃走』で言う。
《我々はドイツにおける数百万の人々が、彼らの父祖たちが自由のために戦ったのと同じような熱心さで、自由を捨ててしまったこと、自由を求める代わりに、自由から逃れる道を探したこと、他の数百万は無関心な人々であり、自由を、そのために戦い、そのために死ぬほどの価値のあるものとは信じていなかったこと、などを認めざるをえないようになった》
*
自民党広報本部長の河野太郎が、ツイッターを更新。新型コロナウイルス感染予防のためのワクチン接種と安全性を改めて呼びかけた。
《ワクチンをうって何千人の人が亡くなったなどとデマが流されています》
《米国CDCは、5億7900万回のワクチン接種が行われ、死亡例に関係しているのは、J&J/Janssenの9例だったと説明しています》
《ワクチンは安全で、有効です。ワクチンの利益は、そのリスクを大きく上回ります》
ここまではいい。河野は《てか、厚労大臣、ワクチン担当大臣、仕事しれ。」》と続けたが、意味がわからなかったので、ツイッターで《「しれ」って何? 方言? 「知れ」ということ?》と質問したら、《〇〇しろ」を意味するネットスラングです。ネット民に媚びているんでしょう》と教えてくれた人がいた。だとしたら、あまりにも気持ち悪い。
ああ、気持ち悪い。
キモ!
あっ、これは侮辱罪にあたるのか?
*
国会答弁によれば、総理大臣に「嘘つき」というと、「犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別に判断される」とのこと。つまり、懲役刑が科される可能性があるということだ。安倍晋三は、「桜を見る会事件」の前夜祭に関連して2019年11月~2020年3月のわずかな間に国会で118回嘘をついているが、私はそれを批判して「嘘つき」と指摘してきたので、少なくとも118回は逮捕されるかもしれない。日本は一気に変な国になってしまいましたね。
*
その一方で、社会に嘘やデマを垂れ流す連中は放置されたまま。それを組織としてやっているのが維新の会だろう。衆院議員の足立康史は「立民は北朝鮮の工作員」とデマツイート。繰り返しになるが、嘘やデマを垂れ流す自由はない。
先日、維新議員や関係者が引き起こした犯罪について私がまとめたツイートが50万インプレッションを超えていた。参院選前ということもあり、維新がどのような政党なのか知りたい人も多いのだろう。維新については毀誉褒貶があるが、まずは事実を確認することが大切だ。私は「ハーバー・ビジネス・オンライン」というサイトで、維新創始者である橋下徹の過去の発言とその出典を整理しておいたが、サーバー攻撃を受けたらしく私の寄稿した文章も消えてしまった。そこで、該当部分をここに転載しておく。