Scene.33 書棚から本が呼ぶ声がする!
高円寺文庫センター物語㉝
「店長、ご無沙汰してました!」
「わ! 青林工藝舎の水村さん。
そう言っても、手塚社長含めて電話でみなさんのお声は聴いてるけどさ」
「お店に入ってすぐの雑誌コーナーには、『アックス』平積みしていただけているし。漫
画の棚には弊社の本が、常備品のようにあって感謝のしようがありません」
「なに言ってんですか。
ボクなんて『ガロ』に育ててもらったようなもんだし、高円寺の若いのには『青林堂漫画』を読んでもらわなきゃならないもん。
創業社長の長井さんが、言われてた。才能ある漫画家を、世に送り出すのはビジネスじゃなくて義務、って言葉はボクに滲み込んでますからね」
「なんか、店長に会いに来ると昔の青林堂のことも含めて、教えられること多いな!」
「思い入れが違うもん。
本屋デビューの翌年の72年。お客さんに聞かれた本が、店頭在庫がなかったことをいいことに、神保町から三崎町の『木造モルタルの王国』材木屋さんの二階、青林堂まで客注品を喜び勇んで取りに走ったもんだったよ」
「それは、ボクにしたら羨ましいです。その当時から、長井社長や手塚さんと働いていたかったですよ!」
「だろうね・・・・青林堂の黄金時代だもん。
でもさ。例の騒動で買い取られた青林堂を、青林工藝舎も一緒くたにして非難する業界人がいるのよ!
そんな輩に出会ったら、きっちり反論して諭してるっからね」
「ありがとうございます。
ジャーナリズムに携わる方々が、確認もしないで放言するのには困惑しているんですよ。
店長。うちのグッズも増えましたけど、この小さなタイルはなんなんですか?」
「あ! その関西弁みたいな、なんなんって好き!
大阪の版元さんも営業に来るんだけどさ、彼が言う『なんなん』が、ツボにハマるんだな!
そそそ、ボクの鼻の穴に入りそうな小さいタイルね。東京ビッグサイトのギフトショーで、見つけて仕入れたのよ。
同行した女子スタッフの眼力だね!
テレビやラジカセに張り付けて、アートにするんだって。お風呂やキッチンも、タイルでワンポイントアートってお客さんに、モダンアートを教えられちゃうね」
「みんな! みんな!
なんと、浅草キッドさんのサイン会が決まったぜ」
「ロッキンオンからってのが、凄いですよね?!」
「ホントに、ROCK雑誌でのお付き合いもあるけどさ、いろんな方々に支えられて嬉しいよな!」
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