「AV新法」のおかげで現場は大混乱! AV新法最大の問題点とは何か?【篁五郎】
超党派の国会議員は、これだけ現場とズレている法案を作ってしまい可決成立させたわけだが、一体どんなヒアリングをしたのだろうか。調べてみるとAV人権倫理機構が6月28日にAV新法に対する基本姿勢を発表しているので参照してみよう。
発表文によると
《3月31日の内閣府でのヒヤリングでは、志田代表理事が概要を次のように発言》
このような記載があるのでAV人権倫理機構にはヒアリングをしたのは間違いないだろう。しかし、AV人権倫理機構以外に業界団体がヒアリングを受けていない。なぜなら先ほど紹介したAV人権倫理機構の発表文の中に以下の記載があるからだ。
《今回の立法において、業界の実態把握については、当機構からの情報提供が参考とされたようであるが、業界の構成員からの直接の聞き取りは実施されなかった。》
メーカーやプロダクション、現場の制作者の意見が全く反映されていない法律なのは明らかになった。しかもAV新法を要望したNPO法人ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子弁護士は、適法AVの取り組みも知らないらしい。
伊藤弁護士が、Twitter上で現役のセクシー女優・天使(あまつかさ)もえ氏から「適正AVが設立された現在でも自主規制の及んでいないプロダクションやメーカーがあるなら名前を出してほしい」と質問をした。
すると、伊藤弁護士は「沢山ありますので、ご自身でお調べいただけますか。法律を作ったのは議員ですので議員にお尋ねいただけますか」と回答を拒否。
天使氏はAV人権倫理機構成立以降、適法AV出演者で強要された例はないとした上で「規制に関わる対象に説明するつもりはないという意思表示ということで宜しいでしょうか?」と問いただすも伊藤弁護士は答えることなくTwitter上でのやり取りは終了した。
つまり、伊藤弁護士が主宰しているNPO法人ヒューマンライツ・ナウもAV業界の現状をきちんと調査せずに、AV新法を作るように要請したようなものだ。
確かに同人AVと呼ばれるFC2やPornhubといったアダルトサイトに投稿される「個人撮影」と呼ばれる映像は、トラブルが続出している。その理由は制作者に遵法意識がないからだ。いわゆる同人AVに出演者した女性はトラブルに巻き込まれて泣き寝入りをしている人も多い。そうした女性を救済する方法を考えるのは当然のこと。
しかし、適法AVは自主規制や業界内でルールを守って適法の範囲内で活動をしている。違法行為をする輩と一緒にされたらたまらないだろう。AV人権倫理機構はAV新法を概ね評価するも、反省点として以下の意見を表明している。
《今回の「新法」の立法過程では、被害者、それも適正AV外や、適正AVの自主規制により健全化が進む以前に被害に遭われた方からのヒヤリングが中心となったため、「AV女優」一般に対する認知が歪んでしまったと言わざるを得ない。たとえば、出演女優は全員被害者であって自分から望んで出演している者はいない、といった言説や、AV女優という職業に対する偏見を助長するような言説が出てきてしまった。さらには、正確な実態把握ができていないまま、特異な犯罪事例を「AV業界」「AV女優」として報道する報道機関もあり、こうした流れが出演者・事業者一般への社会的差別につながりかねないことを憂慮している》
現在、AV業界から適法AVを守るためセクシー女優が発起人となって改正を求める署名や男優が中心で執行停止を求める署名運動が行われている。現状にそぐわない法案を執行すればさらなる被害者が出るのは間違いない。参議院選挙終了後、すぐにも執行停止か法改正されることを切に望む。
文:篁五郎