「いま、どのような仕事に携わっていますか?」古市憲寿さんに聞く!(5)
コメンテーターはいつも”無難と炎上”の間に立たされている
コメンテーターという「不思議」な仕事
テレビではコメンテーターとしての出演が多く、「ワイドナショー」(フジテレビ)では物議を醸す発言の数々で反響を呼んでいる。
「最近忙しそうですね」と言われることが多いんですけど……そんなにガツガツと仕事をしているつもりは全然ないんですよね。
紙媒体での連載は何本か持っていますが、そんなにガッツリした寄稿をしているわけではありません。雑誌では「oggi」(社会学者・古市憲寿のボク的「快適?」アンテナ)「very」(「それってこっちのほうがよくないですか?」古市憲寿の未来社会学)「with」(古市憲寿の人生相談)「anan」(紙のラジオ×朝井リョウ)などにエッセイを書いていますが……こうやって並べてみると、なぜか女性誌ばっかりですね(笑)。
テレビも「ワイドナショー」(フジテレビ)、「とくダネ!」(フジテレビ)といった番組にコメンテーターとして出演していますが、それぞれ月に1~2回くらい。他にも、ニュースや討論番組でゲストとして呼ばれることもありますが、テレビ出演自体はせいぜい週に一度くらい。よほど興味が持てる仕事以外は、ほとんど遠慮しているような状態です。
コメンテーターという仕事は、なかなか難しいものだなと感じています。世間的なコメンテーターへの評判って、あまりいいものではありませんよね。
テレビを通して観ていると、「なんか偉そうに批判するだけの人」のように見えてしまいがちですよね。僕自身も、自分がコメンテーターとしてメディアに出演するまでは、「コメンテーター」の意義がよくわかりませんでしたから。
当たり前ですが、コメンテーターの仕事を引き受けた以上、どんなに興味のない話題についてもコメントしなきゃいけない。
以前、ある番組で「推定100歳を超えるピンタゾウガメ、最後の一匹が死亡か?」というニュースへのコメントを求められたことがありますが、本当に言うことがなかったです。しかも結局、そのピンタゾウガメは最後の一匹ではなかったことが後からわかったんですよ。
コメンテーターは常に“無難と炎上”の間に立たされている存在だと思います。人権に関わる問題とか、現在進行形のニュースについては、いろんなことを気にしすぎると無難なことしか言えなくなってしまいます。自分の身は守れますが、だったらコメントする意味自体がない。コメンテーターの役割の一つは、多様な意見を提示することですから。
かと言って私論を全面に展開したりすると、反論する人たちが増えてインターネットで叩かれ、すぐに炎上する。そのバランスを考えつつも、リアルタイムで気の利いた発言をしていくのが、コメンテーターという不思議な仕事の難しさだと思います。