貴重な資料が出てきた！　ほぼ一年を遡ることになってしまうが、文庫センターの売行き傾向をみるのに面白いので紹介したい。

2001年1月の雑誌『ダカーポ』の週間ベストセラー欄で、文芸書とノンフィクション他の蘭の最下段に「ウチの売れ筋 高円寺文庫センター 店長 能川和男」とあった。

まずは、その全文を以下に転載します。

『本屋の正月はつらい。単行本はみんな20世紀の遺産で商い中。1月も半ばを過ぎて本格的に新刊が入荷してきた。しかもいきなり文庫センター向きの凄いヤツ。浅草キッドの「お笑い 男の星座」（文芸春秋）だ。兵隊の位でいえば大将なんだな。

1冊目はA氏がお買い上げ。幸先がよい。A氏とは、秘かにサブカル本のアンテナにしている感度良好のお客である。彼が買った本は売れる。はずれもたまにはあるけれど。

水道橋博士がタレント本は売れないと嘆いていたとか、申し訳ない、文庫センターでのメガヒットは世間では売れないのです。これ鉄則。

ただ今回は匂う。ジンクスはついえ去るか否か。』

そして、その上段にある世間様のベストセラーはというと・・・・ 

文芸書　　　　　以下、共にトーハン調べ

１ 沙中の回廊（上・下）／宮城谷昌光／朝日新聞社

２ リセット／北村 薫／新潮社

３ 血脈（上）／佐藤愛子／文芸春秋

４ シドニー！／村上春樹／文芸春秋

５ あふれた愛／天童荒太／集英社

６ 時宗（弐）／高橋克彦／NHK出版

７ ニュースキャスター／山川健一／幻冬舎

８ 恐怖／筒井康隆／文芸春秋

９ 仁淀川／宮尾登美子／新潮社

10 時宗（壱）／高橋克彦／NHK出版

ノンフィクション他

１ チーズはどこへ消えた？／スペンサー・ジョンソン／扶桑社

２ プラトニック・セックス／飯島 愛／小学館

３ 続続・伊藤家の食卓／日本テレビ編／日本テレビ放送網

４ 光に向かって100の花束／高森顕徹／１万年堂出版

５ 話を聞かない男、地図が読めない女／アラン・ピーズ他／主婦の友社

６ ヒットマン／中保喜代春／講談社

７ ジョカトーレ／小松成美／文芸春秋

８ 中谷美紀写真集「NAKATANI」／田島一成撮影／ロッキング・オン

９ だから、あなたも生きぬいて／大平光代／講談社

10 子どもが育つ魔法の言葉／ドロシー・ロー・ノルト／PHP研究所

マガジンハウスの雑誌は、頻繁に文庫センターを紹介してくれた。『ダカーポ』の頻度が高く、このようなデータ物が多かった

不景気風にさらされた高円寺のお客さんは、文芸書は三年待てば文庫で読めるという風情で村上春樹や筒井康隆でも売れない。

『プラトニック・セックス』と『中谷美紀写真集』くらいしか売れなかったんだから、いかに文庫センターでベストセラーが必要とされていないかがわかる。また売りたくっても、ベストセラーのピークが過ぎたころにしか入荷しなかった。