ウクライナ戦争と安倍総理殺害【佐藤健志】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

ウクライナ戦争と安倍総理殺害【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」45

 

安倍晋三元総理は、参院選の自民党候補者を応援するため全国各地を遊説していた(2022年7月3日)。

 

◆総理殺害とナショナリズムのねじれ

 ウクライナ戦争は、本年2月の勃発より半年を経て、ますます長期化の様相を呈してきました。

 同国の東部、および南部地域を制圧したロシアは、住民投票による当該地域の併合をもくろんでいる模様。

 「われわれが勝手にウクライナの領土を奪っているのではない。現地の住民がロシアへの併合を望んだので、その意向を尊重したのだ」という形にするわけです。

 

 当然、ウクライナ側はこれら地域、とくに南部の奪還をめざす。

 ゼレンスキー大統領は8月15日、ロシアが2014年に併合したクリミアの「脱占領」に向けて、諮問機関を設置するにいたりました。

 

 そんな中、わが国では78日、憲政史上最長の任期を誇った安倍晋三元総理(以下「安倍総理」)が、選挙遊説中、銃撃されて亡くなる事件が発生。

 722日、政府は国葬を閣議決定したものの、「国を挙げて死を悼む」という雰囲気にはなっていません。

 事件をきっかけとして、韓国で創設された新興宗教・統一教会(現・世界平和統一家庭連合)や、その関連団体と、安倍総理が浅からぬ関係を持ち、選挙でも支援を受けていたことが浮上したのです。

 

 統一教会は、いわゆる「霊感商法」や、信者による多額の献金、大規模な合同結婚式の開催などで世を騒がせ、社会問題となった団体。

 発祥の地が韓国のためか、教義には反日的な要素も目立ちます。

 日本は「サタン(悪魔)の国」であり、とりわけ朝鮮にたいしては植民地支配の罪を犯したため、それを償うためにも信者は貢がねばならないという次第。

 

 片や安倍総理と言えば、保守派のナショナリストと目されてきた人物。

 ナショナリズムとは自国の利益、および自国民の幸福を重視する理念のはずです。

 それが反日的な教義を掲げ、日本で社会問題を引き起こした宗教団体と懇意にしていたのですから、わが国のナショナリズムとは一体何なのか、訳が分からなくなるではありませんか。

 

 さらに安倍総理の姿を見て、自民党の議員の間に「統一教会と関わって何が悪い」という開き直りが広まったとも指摘されています。

 自民党が与党として国政を担っている、つまりナショナリズムを体現する責任を負っているのを思えば、由々しき話と言わねばなりません。

 

 しかるにお立ち会い。

 「ウクライナ侵攻とナショナリズムのねじれ」(第43回)で論じたとおり、ウクライナ戦争をどう評価するか、あるいはこの戦争がなぜ単純な解釈を許さないかをめぐっては、ナショナリズムの問題が大きく関わっています。

 わけても重要なのが「ナショナリズムと帝国主義・覇権主義は、一見すると対極にあるようだが、両者を明確に区分することはできない」という、理念的なねじれの存在。

 だが安倍総理殺害の背後にも、ナショナリストに率いられた政権党が反日的な宗教団体と手を組んだという理念のねじれがある。

 

 ならば「ウクライナ戦争をどう捉えるか」は、われわれ日本人にとり、「安倍総理殺害をどう捉えるか」と、根底でつながったものになるのではないか?

 先へ進みましょう。

 

次のページプーチンが挑んだ〈現状〉とは

KEYWORDS:

 

《『感染の令和』オンライン読書会開催!!》

 

時代の全貌を提示した衝撃の書『感染の令和 またはあらかじめ失われた日本を』を、著者・佐藤健志みずから徹底解説!

ご参加希望の方は、下の画像をクリック!

特別動画「何でもありは、滅びのしるし。令和は戦後の完成形だ」も、あわせてご覧になれます。

※上の画像をクリックすると、お申し込みページにジャンプします。

<特別動画>

「何でもありは、滅びのしるし。令和は戦後の完成形だ」も、あわせてご覧になれます。

↓ ※下の画像をクリックすると動画が再生します。

 

開催日時:9月17日(土)

解説書籍:『感染の令和』(KKベストセラーズ)

講義時間:14:00〜15:30

(休憩10分間)

質問時間:15:40〜16:00

※時間配分は変更となる場合がございます。

※佐藤先生のご要望により、第2期読書会ではQ&Aをいっそう充実させます。質問が多数寄せられ、時間内に全て答えきれない場合でも、開催時間を延長して、可能なかぎりお答えします。ライブ開催ならではのやりとりにご期待下さい。

※講義はZOOMを使用してオンライン配信で実施されます。

※参加者全員に講義の録画アーカイブを配信します。

(リアルタイムでご参加頂けない方も安心してお申し込みいただけます)

↓ ↓ ↓ お申し込みはこちら ↓ ↓ ↓

https://pages.keieikagakupub.com/satobc2-v2_54-tw/

 

※本講義に書籍は付属しません。必要に応じてご購入ください。

※受講にあたり、書籍の購入・読了は必須ではありません。

第2期総合テーマ「激動の2022年に立ち向かう」

今まで伝えした内容は、佐藤健志のオンライン読書会「READ INTO GOLD~黄金の知的体験~」第2期(全3回)の1回目をめぐるもの。
→第1期については、コチラからご確認ください


「READ INTO GOLD~黄金の知的体験~」は、ZOOMを利用したオンライン読書会です。
第2期となる今回の総合テーマは「激動の2022年に立ち向かう」。
次の3冊を題材に、最新の話題と深い分析を融合させ、他では得られない洞察と知見を提供します。

まず『「帝国」ロシアの地政学』では、〈ロシアの視点を知る〉ことを通じて、国際情勢について多角的・主体的な理解を得ていただく。
つづく『感染の令和』では、〈コンセンサス・リアリティ(共有された現実)の解体〉をモチーフに、現代日本の危機の本質をつかんでいただき、
そして『変異する資本主義』では、〈経済政策の革命〉を糸口に、日本再生の方策を手にしていただくことになります。

各回の内容は、むろん独立しています。
ただし回を追うごとに、知見や認識が積み重なり、より深い洞察にいたることができるようにも構成されている。
複利計算さながら、累積的な効果があるのです。

3回全てにご参加いただければ、「物事を総合的・体系的に見られるようになった!」と、ご自分でも驚かれることでしょう。
日本の問題と世界の問題がつながり、政治と経済、経済と歴史も一体化する。
巷(ちまた)にあふれる雑多な情報に惑わされることなく、時代の本質をつかみ、地に足をつけて判断・行動することができるようになるのです。

さらに第2期の内容は、第1期の内容とも〈累積的なつながり〉を持っています。
第1期のアーカイブ配信もご覧いただくことで、あなたの知見や認識は、さらに大きくふくらむことでしょう。

オススメ記事

佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

感染の令和: またはあらかじめ失われた日本へ
感染の令和: またはあらかじめ失われた日本へ
  • 佐藤健志
  • 2021.12.22
平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路
平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路
  • 佐藤 健志
  • 2018.09.15
[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)
[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)
  • エドマンド・バーク
  • 2020.12.02