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エリザベス女王を満足させた新幹線の運転技術

エリザベス女王を満足させた新幹線の巧みな運転技術とはなんだったのか?

 上手な運転士ほど、「ATCに当てない運転」の技術、運転士としての誇りをもっています。デジタルATCではかなり緩和されましたが、ATC任せでブレーキがかかると衝撃があり、乗り心地に影響するからです。

 一例ですが、運転士たちは風景で距離を知り、そこから到達時間を割り出して速度を制御。秒単位の運転を日々こなしています。

速度計も針が横移動する視認性が高めらた設計となった。ATCの車内信号が、速度の上に現示される。速度計の数字は時速260キロまで刻まれている。

 昭和50(1975)年5月、英国エリザベス女王ご夫妻が国賓として来日した際の出来事です。

 京都訪問が予定されていましたが、折からの労働組合による春闘決戦ストライキにより新幹線が運休。

 やむなく往路は空路を利用されましたが、帰路は新幹線にご乗車されました。

 女王陛下は新幹線への関心が高く、予定を変更し、ご乗車される新幹線の入線をホームで眺められたほどです。しかし、当日は大雨のため名古屋到着ですでに3分の遅れ。

 雨による徐行区間があった影響でした。遅れは進み、浜名湖通過で4分に、三島通過で1分取り戻すのが精いっぱいでした。

「日本の新幹線は時計より正確だと聞いています」という女王陛下のお言葉。国鉄関係者にあきらめムードが漂いましたが、ここで職人技の「ATCに当てない運転」です。

 担当の運転士はATCでブレーキがかかる頭打ち速度210キロ(現在はやや高めに設定)を超えない209キロで運転を維持。

 不可能と思われた東京駅の定刻着を実現したのです。

 しかも、富士山付近では名峰をご覧いただくために速度を下げていました。

 到着後、夫君のフィリップ殿下は「快適な旅行でした」と述べ女王陛下も笑顔でうなづかれ、新幹線には大変満足して帰国の途に就かれています。

エリザベス女王、画像NASA

 

 

 

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斉木 実

さいき みのる

1963年、東京都生まれ。多摩芸術学園写真学科(現・多摩美術大学美術学部2部)中退。嘱託カメラマン、スタジオアシスタントなどを務めるかたわら、鉄道写真に取り組む。現在は鉄道写真作家として鉄道誌や旅行誌のほか、幅広いメディアで活動。車両や駅などの本質をとらえ、精細に作画表現するのをライフワークとする。米屋浩二との共著で『ニッポン鉄道遺産』(交通新聞社)や『ローカル線を旅する本』(KKベストセラーズ)、池口英司との共著で『知られざる鉄道遺産 首都圏 』(交通新聞社)がある。


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