AKBの痩せ姫・岡田奈々の「脱退」騒動に見る、アイドル=パパ活という構図。所詮、男女は化かし合い!【宝泉薫】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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AKBの痩せ姫・岡田奈々の「脱退」騒動に見る、アイドル=パパ活という構図。所詮、男女は化かし合い!【宝泉薫】

岡田奈々

 

■「恋愛禁止ルール」を破った岡田奈々が事実上の脱退

 

 AKB48の岡田奈々がグループからの卒業を発表した。俳優・猪野広樹との交際が発覚し、いわゆる「恋愛禁止ルール」を破ってしまったことがその理由だ。事実上の脱退ともいえる。

 この恋愛禁止ルールをめぐっては、過去にもさまざまなアイドルが騒動を起こしたり、巻き込まれたりしてきた。AKBでは、指原莉乃や峯岸みなみの件が有名だ。ただ、今回は岡田のようなタイプが主役になったことが興味深い。

 まず、彼女は2017年の「選抜総選挙」でこんな趣旨のスピーチをした。

「スキャンダルなどをネタや笑いにして這い上がるメンバーが見られます。そういう人がいてもいいけど、マネしていいとは絶対思わないし、まっすぐに頑張っている人が報われるようにグループを変えていきたいです」

 この総選挙において、NMB48の須藤凜々花が突然「結婚」宣言をして物議をかもしたことを踏まえてのものだ。岡田はこのとき「風紀委員長」を目指すとまで言っていたため、今回のスキャンダルはまさに「ブーメラン」となって返ってきてしまった。

 それゆえ、卒業発表のコメントでは、

「にもかかわらず こうして嘘をつくような形になってしまい 申し訳ない気持ちでいっぱいです。ただ、当時の自分の言葉に嘘は1つもありません」

 と、語った。

 それともうひとつ、彼女は16年に摂食障害であることを告白。その葛藤がドキュメンタリー番組として放送されたりもした。つまり、痩せ姫アイドルのひとりであり、そのあたりが生き方にも反映されているように思う。

 というのも、痩せ姫には自分探し志向や依存体質、我が強く、嘘がつけないといった性格的特徴があるからだ。アイドルとして自分を探すうちに、依存対象がグループから恋人に変わったこと、そんな自分に対して正直なスタンスを貫きたいこと。ここ数年の彼女の生き方からは、そういうものが見て取れる。

 こういう人には独特の魅力があり、熱烈な支持も集めるかわりに、人生は波瀾万丈になりやすい。有名なところでは、宮沢りえや英国のダイアナ妃などもそうだ。岡田も容姿や歌、ダンスに加え、こうした性格があいまって、AKBの中心メンバーにまで登りつめられたのである。

 ただ、登りつめるためにはファンの支えが不可欠だったわけで、今回の騒動について、騙された気分になったファンは少なくないようだ。実際、アイドルが騙したともいえなくはない。

 が、所詮、男と女は化かし合いだ。ホステスやホストといったサービス業、あるいはパパ活なども、それを前提にして成立している。どっちもどっちというか、誰が得をし、誰が損をするかも、さまざまだろう。

 そういえば、文学にも象徴的な作品がある。森鷗外の「舞姫」と谷崎潤一郎の「痴人の愛」だ。

 前者はエリート官僚が留学先のドイツで貧しい踊子と恋におち、妊娠までさせながら、保身のために悩みつつ棄てる話。後者は真面目で平凡な独身男がカフェで見つけた少女を囲って好みの女にしつけようとしたところ、逆にその奔放で淫乱な心身に翻弄され、奴隷のようになってしまう話である。

 それぞれ、疑似恋愛的だったり、泥沼的だったりして、女性アイドルと男性ファンの関係性を思わせるところもある。ファンは移り気で、推しを平気で乗り換えたりするが、その一方で、アイドルが際限なく貢がせ続けたりもするからだ。

 アイドルにしてみれば、ファン心理をうまく利用して人気者になり、そのうち玉の輿に乗るという勝ち逃げも可能。そこで思い出されるのが、秋元康と結婚した高井麻巳子である。

 秋元系アイドルグループの元祖・おニャン子クラブの出身だが、デビュー曲「セーラー服を脱がさないで」の時点では、中心メンバーではなかった。筆者が当時関わっていた雑誌「日刊アルバイトニュース」のインタビューでも、引っ張り出されたのは新田恵利をはじめとするフロントの4人。その4人が「夕やけニャンニャン」終了後、インタビュー場所に移動するところを、連載仲間の石丸元章がたまたま見ていて、

「高井が新田たちのことを物欲しそうな目で見てましたよ」

 と、話してくれたことがある。

 その後、売れっ子になった高井には別の雑誌で何度かインタビューしたが、優等生っぽい生真面目さと女ならではのしたたかさとが同居するような不思議なアイドルだった。いわゆるガチ恋的なファンも多かったものの、そういうアイドルは得てして大物と結婚したりする。秋元と結婚したときには、なるほどと思わされた。個人的にあまり入れ込むことはなかったが、アイドル史上有数の玉の輿婚を実現したことには、あっぱれというほかない。

 とまあ、アイドルとファンの関係もまた、男女の化かし合いが根底にある。疑似恋愛やフェティシズムといった性的妄想をあいだに置き、萌え感情を喚起させることで、その歌や芝居に付加価値を生じさせるのだ。いわば、あばたもえくぼみたいな仕組みだが、日本ではこれを長年かけて文化的に成熟させてきた。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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