「Breaking Down」絶好調の朝倉未来が実は追い込まれていた!?【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「Breaking Down」絶好調の朝倉未来が実は追い込まれていた!?【篁五郎】

 

朝倉未来

 

■朝倉未来の類稀なるプロデュース力に脱帽

 

 総合格闘技の朝倉未来の快進撃が止まらない。11月18日にYouTubeチャンネルの登録者数が300万人超えを達成し、自身がプロデューサーを務める総合格闘技イベント「Breaking Down」も絶好調だ。

 11月3日に開催されたBreakingDownでは、かつて朝倉が総合格闘技デビューをしたTHE OUTSIDERの常連有名人とBreakingDownのレギュラー有名人の対抗戦も実現し大好評だった。師匠の前田日明も高評価を与えた。Breaking Downの人気の理由は、試合時間が僅か1分と短時間で決着が付く点だ。これはTikTokや早送り動画を見慣れている若者にとってわかりやすい。1分1ラウンドの短期決戦は格闘技に馴染みのない人でも比較的、視聴しやすいと言える。

 ただ、試合が1分だと選手に感情移入する前に終わってしまう。ところがその点も抜かりがない。選手は一攫千金を狙う素人が中心。出場できるかどうかは公開オーディションによって決められる。その模様をYouTubeで配信し、視聴者を引き付けているのだ。

 血気盛んな出場希望者たちは、自分をアピールするために過激な言動に打って出る。レギュラーと言われる過去大会の実績者へ口で挑発するのは当たり前。乱闘騒ぎが起きるのも日常茶飯事だ。必死な姿を動画で配信することで出場選手のキャラクターを伝える工夫をしている。

 もちろん演出はそれだけではない。全試合で出場選手の煽り動画を作成し、視聴者が感情移入をしやすくしているのだ。朝倉自身もインタビューで以下のように答えている。

 「(オーディションや記者会見などで選手や候補者が)煽り合いをすると多くの人が注目します。それで注目したときに、SNSなどで情報が調べられますから、その人の人間性が分かりやすいんですよね。運営側も煽り動画を全試合作るようにしていて、その人がどんな人なのかを分かりやすく伝えるようにしています。だから視聴者も個々の魅力に気付きやすくなっていると思います」

 こうした演出が人気を呼び、PV(ペーパービュー)中心でやっていたが、2023年2月に開催予定の次回大会は5000人から1万人規模の会場での開催も視野に入れているという。さらに公式アプリも作成し、大会情報やオーディション情報に加え、イベントの告知や選手への応援投稿など、アプリでしか得られない情報やイベントを発信していく。アプリのダウンロードは無料で、有料プランは「月額プラン」を950円、「年額プラン」を9500円とし、有料会員のみ参加できるコンテンツを提供する予定だ。

 総合格闘技といえば、アメリカのUFCを頂点としてRIZINやDEEPといったイベントが乱立しているが、Breaking Down は早くも独自の地位を築き上げたといえる。

 しかし一方で問題が起きているのも見逃せない。11月3日の「Breaking Down 6」に出場した筋トレYouTuberの緒方友莉奈が、対戦相手のグラビアアイドルみらたむから試合中に目つぶしをされたと告白した。緒方は10月22日に行われたオーディション後のYouTubeの生配信やツイートで、泥酔状態にあったTikTokerのいーたろやみらたむから左膝にけがを負わされたとも明かしている。

 また大会前日の会見で、出場選手の一人が対戦相手をパイプ椅子で殴打。相手がケガを負って試合が中止に追い込まれてしまった。朝倉は「本人の反省も大事だと思うし、僕らもセキュリティーの強化だったり、度がすぎたことをしないようなアナウンスだったり、同意書だったりとか、そういったところもしっかりしていく」と安全面の強化を約束している。

 オーディションや会見での煽り合いについては審査員からこんな言葉も出ている。

 「やりたい放題にやった人が結果的に本戦出場するとなると、それが成功例になってしまう。『とにかく暴れればいい』みたいなことは避けたいですね。

 ただ、『Breaking Down』はヒリヒリしたオーディション(『Breaking Down 4』から導入)からの試合という流れがウケているのも事実で、制限のかけ方によっては通常の格闘技の大会と変わらなくなってしまう。そうなると『Breaking Down』じゃなくてもいいじゃないか、となってしまいます。トラッシュトークなど方法はいろいろありますが、お互いに絶対負けられない状態で試合を迎えるから価値が出るエンターテインメントですから、それがないとローリスクな、ただの技術が低い人同士の戦いになってしまいます」

 試合前後の煽り合いや乱闘騒ぎが魅力なだけに線引きの難しさをにじませた。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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