「話題づくり」と言われても僕は続ける
芸人とプロ野球「二刀流」にかける思い
四国アイランドリーグでデビューを飾ったサブロク双亮投手。グラウンド以外にあった戦いとは。
芸人として何かを変えたいという思い
接していけば、その本気度も、野球に対する思いも伝わる。でも接することができない人たちがどう思っているのか、やはり不安になったことは確かだ。
「応援してくれた人のほうが多く感じたけれど、売名とか、話題づくりとか言われたことも、それへの不安もありましたよね」
初登板前、不安に襲われたように。
ただし杉浦の強さはこの「グラウンド以外の戦い」にこそ見出せる。こんな言葉が象徴的だ。
「決断のきっかけとして、芸人としてまだまだ足りない、何かを変えなければいけない、という思いがあったことは事実ですから。芸人としてもう一皮向けたいとここ数年ずっと考え続けていて、その答えがでなくて……。考えることはするんですけど具体的に行動に移せない自分やコンビに苛立ったり、不安になったり。そこで自分の人生についてなんかまで考えちゃったりして。で、そんなタイミングでトライアウトのことを知った。プロ野球への思い、何かを変えたいという思い、行動に移せない人生からの脱却……ああ、受けたい! と思ったわけだから」
杉浦自身この挑戦に対し、芸人という立場に身を置きながら行うことに対する葛藤があったし、うまくいけば芸人としても成長できる――いや、自分を変えられると思っている。だから「グラウンド以外の戦い」に自覚的であり、目を背けない。だから、強い。
ある時、一緒に野球をしたことがある芸人さんに、こんな話を聞いたことがある。
高校まで野球の名門高校・帝京でプレーをし、以降も20年近く週1回の草野球を欠かさなかった杉浦は、根っからの野球好きであり、ひとたびプレーを始めると芸人であるのに「笑い」を忘れる。だから――「マウンド上の杉浦さんは、全然面白くない(笑)」
笑いはないかもしれない。それでも、彼の「戦い」は面白い。