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「サッカーを知っている選手」は何を“知っている”のか

「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦

・「サッカーを知っている」ブラジル人監督の言葉

 他にも例を挙げればたくさんありますが、そうした自分のプレーを選択するときの基準にいつも“相手“が存在するわけです。それは一見当たり前のことですが、流れる時間の中で絶えず判断を繰り返すサッカーというスポーツの中ではとても難しいものです。

 このことはもっとかみ砕いて言えば、相手の意図ややりたいことを考えた上でプレーできる、つまり相手が嫌がることができるということです。そこには想像力が必要です。経験が伴うものもありますが、それ以上に、起こった現象に対してどこまで相手を想像して考えることができるかということが大事だと思います。

 鹿島の話をしますと、ブラジルは最も「サッカーを知っている」と言われている国で、鹿島はブラジルの影響を強く受けてきました。僕が鹿島に所属していた10年の間に4人のブラジル人監督のもとでプレーさせていただきましたが、センターバックの僕に彼らが言うことはいつも同じでした。

「センターバックは相手フォワードにいつも存在を示さなくてはいけない。相手フォワードが岩政の前でボールを受けるのを嫌がらなくてはいけない。」

 これはまさに相手を強く意識した言葉です。相手に嫌がられることの重要性、そして、何をしたら相手は嫌がるのか。相手のことを知り、想像する力が必要だということです。

・マリーシアという言葉の誤解

 ブラジルや鹿島のサッカーを語るときに、「マリーシア」という言葉が使われ、その言葉が独り歩きし、「ずる賢いプレー」を通り越して、「汚いプレー」という印象で語られることがあります。
 しかし、そのサッカーを身近に学ばせていただいた者として、それは大きく的を外していると言えます。彼らが言い続けていたのは、サッカーは心でプレーするということ。そして、自分たちがいいプレーをするということは、相手がいいプレーをしないということ、だと思います。

 サッカーは、90分という流れる時間の中で常に状況判断を求められます。サッカーボールは丸く、状況は刻一刻と移り変わります。
「自分」、「味方」、「ボール」そして「相手」
 常に状況をアップデートしていきながら、的確な判断ができるかが勝負を分けるディテールになります。
  つまり、サッカーを知っている選手とは、状況に「相手」も含めて判断できる選手であり、それはつまり、想像・考えることができる選手と言えるのです。

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岩政 大樹

いわまさ だいき

東京ユナイテッドFC

サッカー選手

1982年1月30日生まれ、35歳。187cm/85kg。ポジションはセンターバック。

山口県出身。周東FC、大島JSCを経て岩国高校サッカー部でプレー。東京学芸大学在学中に注目を集め、2004年鹿島アントラーズに加入。

2007年~2009年鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。自身も3年連続Jリーグベストイレブンに選出される。

2013年鹿島アントラーズを退団。2014年にはタイプレミアリーグのテロサーサナでプレー、翌年ファジアーノ岡山に加入。

強さとクレバーさを兼ね備えたプレーでディフェンスラインのリーダーとして活躍する。2017年シーズンより関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCに加入(コーチ兼任)。東京大学サッカー部コーチも兼任。

2016年シーズン終了現在で、J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。

2017年9月初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を上梓。


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