1300年の歴史を誇る「潮かつお」を唯一作るカネサ鰹節商店
奈良時代には税として平城京へ
日本で唯一「潮鰹」をつくる店
1300年前の日本の味を今に伝える「潮鰹」 究極の塩辛さと旨味を楽しむ 江戸時代、カツオの追い込み漁が盛んで、鰹節作りの長い伝統を持つ静岡県西伊豆の田子。
この地で長年、伝統的手法を使って鰹節を作り続けるカネサ鰹節商店は、鰹節よりさらに古い歴史を持つ塩蔵のカツオ「潮鰹」を日本で唯一、製造している。5代目の芹沢安久さんに、今日ではまさに幻の味とも言える「潮鰹」の歴史や食べ方について伺った。
鰹節の歴史は約650年間
古くから日本人に愛されてきた魚、カツオ。刺身で食べるのはもちろん、古来からさまざまな保存方法が行われてきた。もっともポピュラーなのが鰹節で、毎日のように食卓にのぼる、まさに日本の味の代表だろう。
煮たカツオを干して作る鰹節の歴史は約650年前くらいからといわれ、15世紀、室町時代の料理本『四条流包丁書』の中に花鰹らしい食材についての記述がある。
(※「鰹節」の作り方については、発売中の『一個人』5月号で紹介している)
天平5年の文献にもある「堅魚」
鰹節誕生以前、カツオは「堅魚」(素干しや塩蔵)、「煮堅魚」(1度煮てから干して作る)という形で加工された。 伊豆で作られた「堅魚」のもっとも古い文献資料は733(天平5)年にまで遡る。奈良の平城京跡から見つかった木簡に『伊豆国那賀郡丹科郷多具里物部千足調堅魚九連一丸』と書かれていて、伊豆の多具里(現在の田子のこと)から堅魚を朝廷に納めたことがわかる。
「堅魚」を日本で唯一製造する「カネサ鰹節商店』
現在、「堅魚」は塩蔵のカツオとして、日本で唯一、カネサ鰹節商店でのみ製造されている。その手法はある意味、非常にシンプルだ。内臓を取ったカツオを水で洗い、丸ごと大量の塩に漬け込み、約2週間。さらに西伊豆の寒風に約3週間さらしてできあがり。冬の初めに行われる年中行事のような仕事である。
港町の漁師にとって、潮鰹は特別な意味を持つ食材である。まず正月の三が日、潮鰹を神社や神棚に奉納し、1年の安全を祈願する。三が日が過ぎると、船主はお下がりをいただき、船の乗り初めの日、宴会の席で船員たちとともに潮鰹を食べる。これを共に食べることが、船主と船員の雇用の証しとなるので、まさに漁師の間の大切な神事なのである。
新商品の開発で復活した「潮鰹」
ただし潮鰹は食べにくい食材でもある。なにしろしょっぱい上、基本的に丸のままの1尾で販売される。冷蔵庫にも入らないし、下ろすのも大変な作業だ。 かつてカネサ鰹節商店でも年間1500本ほど作っていたが、現在は1000本。一時期は500〜600本まで生産量が落ちたこともある。田子地区では漁師の神事に使うということで生産の土壌が残っていたが、それも風前の灯火だ。
しかし1000年以上の歴史を持つ食文化を失うのは惜しいと考えた芹沢さんが「西伊豆しおかつお研究会」を発足させ、食べやすくおいしい新製品を開発。「潮かつおの生半身」や「潮かつおの焼き身」、「かつお節屋の伝統ふりかけ」などに加工し、ご当地グルメ大会などでも大好評を博した。
白いご飯との相性が非常によいので、お茶漬け、おにぎり、おかゆなどに入れると、手軽かつ最高の味覚を楽しめる。おすすめは潮鰹のふりかけを素うどんにかけて、汁なしで食べる「潮かつおうどん」だ。日本古来からの伝統の味をぜひ1度試してみたい。
住所/静岡県加茂郡西伊豆町田子600-1
☎/0558-53-0016
FAX/0558-53-0044
営業/8:00〜19:00
(土日祝日は17:00まで)
休み/無し
※工場見学も可能。お問い合わせください。