転職の面接であがってしまいます。自分の良さを伝えるにはどうすればいいでしょう?
角田陽一郎×加藤昌治【あんちょこ通信】第12回
■ユーティリティと一点突破、どちらが大事?
加藤:少し話題を変えると、角田くんもそうだけど、フリーランスの人が初めてのクライアントさんと打ち合わせするのもある種の面接だから、結構頻繁に面接の機会があることになるよね。あんちょこ通信編集長のカイノショウさんはフリーランスのライターさんだけど、何か心掛けていることはありますか?
甲斐荘:そもそも打ち合わせに至る以前の問題として、加藤さんの言う「カードを揃える」ということは、やっぱり意識しますね。僕は世間的には「ライター」ということになると思うのですが、「なるべく周りから何をやっている人か分からないようになろう」としているところがあります。
と言うのも、この質問者の方も多分仕事の面での成長ができないことが嫌で転職しようとしているんだと思いますが、僕も近いところがあり、「あの人はライターだ」とだけ思われて、本当に今後ずっと「書く仕事」しか依頼が来ないのが怖いんです。だから、「あの人はライターをやっているけれど、もうちょっと広い範囲のことが任せられそうだよね」と思ってもらうにはどうしたらいいか、いつもどこか頭にあります。
それにライターとしても、「いつもビジネス記事」とか「いつも教育記事」みたいな感じより、範囲を拡げたほうが生存戦略としてよさそうだし、自分自身もいろんな分野のものを書きたいので、「こういうことが好きです」とか「興味があります」みたいな発信はSNSで意識的にしています。野球でも、打率が2割5分もなかったとしても、内外野両方もある程度守れるようなユーティリティプレイヤーが結構息長く現役だったりするじゃないですか。
角田:カイさんの話はよく分かるんです。だから僕も「バラエティプロデューサー」と名乗っているわけですが、これは「バラエティでいろいろやれるプロデューサー」という意味で、フリーランスとして仕事をするにあたり、「そういうユーティリティ的なブランディングをすると仕事が来るだろうな」と思ったんですね。
けれども、最近は「そうでもないんじゃないか?」と思い直し出している。つまり、ユーティリティプレイヤーには確かに需要があるんだけど、それはあくまで「扱いやすい」という需要なので、ある程度年のいった人と若い人がいたら、若い人のほうに仕事がいくんだよね。だから、むしろ「角田じゃないとダメだ」というスペシャリティがあったほうが、長いこと仕事が来るようになるのかもしれないと、50歳を過ぎてからは思っています。
僕の実感だけでなく、芸能事務所のマネージャーさんや出版社の編集者さんみたいな、「人を世に出す」プロみたいな人と話しをすると、やっぱり「「この人は、この一点だけはすごい」というものがあったほうが売りやすい」と言いますよね。
カイさんはまだ30代だから、「なんでも頼めるよね」という感じで仕事が来る時期だろうけれど、ある一定の年齢やキャリアからはそれが通用しなくなるのかもしれない。
甲斐荘:なるほど。それは大変怖い話ですね……。
角田:そう。これはフリーランスみんなが直面している、結構深刻な話なんですよ。
加藤:角田くんの云うことはもっともで、でもその上で気をつけないといけないのは、「ユーティリティがある」ことと「それを最初に云わない」ことはまた別だということ。これは勘違いしがちなところかもね。
角田:本当に一点しか強みがないと、仕事をし始めてから今度は「底が浅い」と思われることもありそうだしね。