ブレない千葉麗子さん 極左(パヨク)から極右(ウヨク)へ360度の大回転
話題の一冊、『さよならパヨク』書評
・「パヨク」を「保守」「右派」「ウヨク」と読み替えると…
一部で話題(?)の元アイドル千葉麗子氏による著書『さよならパヨク』(青林堂)を読んだ。私が生涯の中で読んだノンフィクションの中でもベスト5に入る出来である。何と素晴らしい理路整然とした美文であるのだろう、と読了後にひとしきり感激にむせび泣いた。というのは嘘だが、この本の中に出てくる「パヨク(“左翼”の揶揄表現)」は、それをすべて「保守」「右派」「ウヨク」と置き換えても全く意味が通じるところに驚愕した次第である。
その前に、本書の要旨を軽くまとめる。元アイドルの千葉麗子さんは、福島出身で子供も居るという状況下、3.11と原発事故に遭遇。子供のためにも原発を何とかしなければ、の思いの一心で反原発運動に傾倒していく。
その中で千葉氏曰く自らが「パヨク」思想に染め上げられていったのは、氏自身が認める「ぱよぱよちーん」なる某外資系企業に勤めるエリートと不倫関係にあったことである。要するに、早い話が「彼氏がパヨクだったから自分もその影響を受けた」という、「彼氏が変わるごとに趣味が変わる」という“あるある”と首肯する展開である。
・カンパで生きる「パヨク」と「ウヨク」
不倫は道徳の問題なので私はこれに対して是も否もないが、ともあれ千葉氏が「決別した」と宣言する「パヨク」の実際は、彼女が転向したはずの愛国・保守派にすべて当てはまるという意味では斬新であり、また奇観でもある。以下具体例をあげる。
千葉氏)パヨクに物販は付きものなんでしょうか。(中略)カンパもたくさん集まっていました。特に大飯原発再稼働反対のピーク時や「あじさい革命」をスローガンに掲げた時は、皆本当にたくさんのカンパをしてくれました。特に高齢者の参加者が千円札や五千円札をカンパ袋にどんどん入れてくれるんです。(P.51「カンパで生活」)
置き換え)保守に物販は付きものなんでしょうか。(中略)カンパもたくさん集まっていました。特に尖閣諸島沖漁船衝突事件のピーク時や「フジテレビ韓流反対」「朝日新聞廃刊」をスローガンに掲げた時は、皆本当にたくさんのカンパをしてくれました。特に高齢者の参加者が千円札や五千円札をカンパ袋にどんどん入れてくれるんです。
千葉氏は本書の中で「パヨク」は高齢者からのカンパで成り立っていることを批判的に喝破しているが、これはすべて「パヨク」を保守、右派に置き換えるとそのまま上記のように成立する文章である。高齢者が競うようにお札をカンパ箱に投げ入れていく様子を観たのは、私の経験の中で5度や10度ではない。毎回である。更に千葉氏は、
もちろんカンパした人は善意からなんですが、受け取る方には、そのお金で生活している人がいるっていうことを聞きました。最初は耳を疑ったのですが、デモに入り浸っている人には、確かにきちんとした仕事をしていない人もいて、どうやって食べていくかとなると、カンパをあてにするしかないということらしいです。(P.51-52)
と指摘している。が、これも極左陣営と極右陣営が瓜二つの構図だ。極右陣営も高齢者らからの善意のカンパで成立しており、実質的にはそこに頼って、つまり喜捨の上にあぐらをかいて生活している人々が少なくない数存在する。極左と極右の正体見たりという記述であり興味深い。