社会の深海魚たち、ディズニー行って窒息【たらい回し人生相談】
【たらい回し人生相談】〜ヤバいやつがもっとヤバいやつに訊く〜 連載第10回
■大司教敗北:
そのアトラクションの名は「イッツア小さな世界」だ。世界中の民族衣装を着た人形が仲良く歌い踊るファンタジックで平和的な夢のアトラクションだ。
この国連の建前みたいなアトラクションを通過した大司教は、なぜか強い心理的なダメージを受けたらしく、いままで見たことがないほどふらふらし始めた。
大司教:これ、米軍が捕虜を洗脳するやつじゃないの?
Rさん:違いますから。
大司教:わかりました。これは共産主義ですね。資本主義を極限まで追求した施設が共産主義的になるのは不思議です。
Rさん:頭がいい人ってこういうのを素直に楽しめないのかなあ(怒るのをやめ、だんだんかわいそうな人を見る目になってくる)
大司教:いや、みんな狂ってて私だけが正常なんですよ……。
Nくん:つぎなに乗ります? そろそろラストですよ。
筆者:大司教にどのアトラクションでとどめを刺すかって言ってる?
いよいよ大詰めだ。
ダメージを受けている大司教を引っぱって最後に向かうアトラクションは「習さんのハチミツ狩り」だ。これはNくんとYくんのオススメで、また「できればキメて乗りたーい」とか言っている。もう四回ぐらい乗っているらしい。
内容は……形容が難しい。とにかく謎のマシンに乗せられてファンタジックな世界をグルグル移動するのでそういう意味ではまさに「たらい回し」という感じで当連載のテーマにふさわしかった。われわれ来客はハチミツの香りの大砲を顔面に受け、出るとみやげものコーナーがある。
大司教:これ作った人ぜったいLSDやってるよ。
Rさん:やってません。
ともあれ、あとはみやげものでも見て、ラストは有名な「電気ねぶた」パレードを見て帰ろうといったところで、ここになってQさん登場、ものすごい遅刻だ。
われわれがお土産を見るあいだ、疲れ果てた大司教はベンチでうなだれていた。うなだれると人間の顔が隠れ、顔面が完全にかぶりものに置換される。近くにいたカップルがそれを見て笑い、スマホを向けていた。写真を撮ってるらしい。大司教がとうとう夢と魔法の国と一体化した瞬間である。
■夢と魔法めぐり、その後:
さて、この慰労の旅も大詰めを迎えた。大司教だけものすごく疲労しているが……。
そしてラストを飾るのは、夜に行われる電気のパレードだ。だいたい電気ねぶたのようなものだ。見るために場所取りの必要があるようだが、筆者ははぐれていた。腹を減らし、ポップコーンを求めてウロウロしていた。ようやく合流したのち、ポップコーンをもしゃもしゃ食べながらみんなに怒られることになった。だって腹が減ってたんだからしょうがなくないか?
そしてパレードが始まる。
暗闇の中を、きらびやかなキャラクターが去来していく。昔の人が想像した浄土のような光景である。それを見て、みな思い思いの感想を口にする。
Yくん:いいね〜。
Nくん:キメて見たーい。
筆者:尻が……冷たい。
大司教:これだけたくさんのLEDを使ってライトの抜けがないのはすごいですね。
Rさん:……なんかかわいそうになってきたなあ。
電気ねぶたが音楽とともに去来する風景は、どこか昔のゲームのエンディングを思わせるものだった。テーマ曲とともにスタッフロールが流れ、これまでのキャラクターが顔見せするやつだ。これが「たらい回し人生相談」の第一部エンディングなのかもしれないな。そう思った。
その後はサイゼリアで食事とあいなった。大司教がおごってくれるっぽい。やったね。私は空腹に任せて食べまくる。Nくんは犯罪の話をし、Yくんは自分のペースを堅持。疲れ果てた大司教はシラフにもかかわらずタガがはずれ、グチモードに入る。
大司教:某ゃるらが時計を返してくれないんですよ……。
本日のグチやらをひとしきり喋ったのち、大司教がぽつりと言う。聞いてみると、某ゃるらという人に時計やら靴を貸したことがあるとのこと。それはビジネス関係で彼にちゃんとした服装をさせるためだったのだが、その後、靴は戻ってきたが時計は戻ってきていないという。けっこう高い時計らしい。
値段を聞いてみるとSさんの年収(上方修正後)のおよそ半分だという。超高級とまではいかないがまあ安くない時計である。某ゃるら氏は時計のベルトサイズを勝手に変えてしまい、戻すからといってそのまま借りパクしたとのこと。
大司教のグチがつづく。
今回の「たらい回し人生相談」は大司教が相談者となる回だ。自然とそういう感じになってきた。
大司教:彼は家賃も払わないのにビルを自分の物件みたいに言うんですよね。
筆者:はあ。
大司教:ツイッターで無職を飼ってるとか世話をしているみたいなアピールしてましたけど、あの家賃は俺持ちで彼は払ってないわけで……。
筆者:あっはい。じゃあそれもネタにしますか……。
大司教:だいたいみんな俺をドラえもんみたいに思ってるけどよお(以下愚痴)
筆者:まだ食えるな……ラザニア追加していいですか。
大司教:勝手にすればいいでしょ。いちいち聞かないでください。
私は消化能力の限界まで食い物を詰め込んで帰った。
なんにせよ、今回は大司教の弱点がわかった回だった。彼の弱点は「夢と魔法」だ。彼は夢と魔法に弱いです。某ゃるらさんも参考にしてほしいと思う。
あと時計返してあげてね……。
✳︎連載「たらい回し人生相談」は毎週日曜日(20時)更新予定
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