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早大大隈講堂•慶大図書館旧館も手がけていた!名門ゼネコンで起きている「下請けいじめ」の他人事ならぬ実態とは

全国のビジネスマンよ!「泣き寝入りはするな」ブラック企業との闘い方


経営施策がなく頓挫・失敗した事業の責任は全て下に押し付ける。下請けや担当社員のことはお構いなし・・・そう思わせる大事件が名門ゼネコンで起きている。早稲田大学の大隈講堂や慶應義塾大学の図書館旧館(いずれも国の重要文化財指定建造物)を始め、全国国公立大学など数多くの由緒ある教育施設を施工し、また有名病院や医療施設の建設工事で知られる戸田建設の騒動だ。いったい何が起こっているのか? 詳細な取材から見えてきたのは、「今だけ・金だけ・自分だけ」体質を具現化した日本企業の経営陣の劣化ぶり。この実情は決して他人事ではないだろう。「弱きを助け強きを挫く」大隈侯も落胆しているはず。心して読むべし。


戸田建設の事業拡大に貢献し、会長、社長を46年間も務めた創業家の戸田順之助氏(故人)は早稲田大学出身。下請けいじめについて、天国でどのように思っているのだろうか?

 

■本業の落ち込みの穴埋めで新規事業を展開するも・・・

 写真週刊誌「FLASH」2023年2月28日発売号において、第一報が伝えられた契約トラブルを発端にした、名門ゼネコン・戸田建設による零細企業いじめ(記事タイトルは「戸田建設 黒幕は創業家4代目の副社長 欠陥品 言いがかりで22億円踏み倒しトラブル」)。この記事を企画立案から取材・執筆を担当した週刊誌記者が「FLASH」では、誌面上の都合で割愛された記事全文の詳細を公開する。

 東京・新宿の「スタジオアルタ」や「早稲田大学大隈講堂」など、数多くの有名建築を手がけ、今年で創業142年を迎える準大手ゼネコンの戸田建設。

「円安や物価高の影響により、建築資材がかつてないほどに高騰するなど、いまゼネコン各社は、非常に苦しい状況に置かれています。その中でも戸田建設は、2023年3月期の営業利益を79億円も下方修正するなど、特に、業績不振が著しい」(不動産ジャーナリスト・榊淳司氏)

 本業の落ち込みの穴埋めをするために、新規事業の立ち上げが急務になっているという。

 戸田建設の支店社員が語る。

「業界内では〝病院の戸田〟と呼ばれ、虎の門病院や都立駒込病院など、全国各地の有名病院を多数、建設しています。そのため、医療機器を扱う専門業者との取り引きも頻繁にあります。コロナ禍において高性能の空気清浄機を導入する病院が増える中、今後も空気清浄機市場は拡大する市場ということで、新規事業の立ち上げを指揮する戸田守道副社長が参入を決断したんです。そこで、社内において空気清浄機メーカー・ゲナノ社製・空気清浄機の国内独占販売の検討が開始されたのです」

 ゲナノ社は、日本では、ほとんど知られていないが、フィンランドに拠点を構え、世界40か国以上で販売を展開している空気清浄機メーカーだ。

「中国・武漢の新型コロナ仮設病院でも数百台のゲナノ社製の空気清浄機が設置されました。欧州のスターバックスにも設置している店舗があります。また、東京オリンピックで金メダルを獲得したホッケーベルギー代表もトレーニングルームなどに設置しています。欧州では医療機関だけでなく、幅広いユーザーに愛用されるなど、コロナ禍以降、急成長を遂げているグローバル企業です」(医療関係者)

 そこで、戸田建設は、ゲナノ社製・空気清浄機の輸入元であるメディカルクリエイトジャパン(以下、MCJ)と国内販売に向けて交渉をはじめる。2020年8月のことだという。

 MCJ代表取締役の上野桂(うえの・けい)氏が契約締結までの経緯について説明する。

「2020年8月3日、東京・宝町のオフィスに呼ばれ、会議室でプレゼンを行いました。同席したのは、戸田副社長(当時、専務)と同社の社員3名です。わたしが、ゲナノ社が行った性能評価試験のデータや欧州での販売実績などを説明したところ、戸田副社長は、同席した社員に対して、『性能が良いのはよく分かった。グループ会社もたくさんあるし、医療機関への販売ルートもあるから、すぐに売れるよね。やろう』と即断。その場で交渉がまとまりました。さらに戸田副社長は、『自分たちでもエビデンスがほしいから、どこか協力してくれる病院でテストを行おう』と、社員に指示も出していました」

 

 

 この商談の翌日から、戸田建設とMCJとの間で具体的な契約内容が精査され始め、2020年12月1日に契約は締結。小誌が独自に入手した戸田建設とMCJが結んだ「取引基本契約書」には、このような記載がある。

〈甲(MCJ)乙(戸田建設)は、第1項の独占販売権許諾の趣旨に鑑み、取引最低販売台数を定め、乙はこの数量を購入するものとする〉

「『取引基本契約書』には、具体的な販売計画も記され、戸田建設は、20年12月から22年9月にかけて1995台を販売し、輸入元である弊社に総額22億750万円を支払うという約束になっています。けれども、現時点で、その約束は果たされていません。というのも、戸田建設からは初回の100台分の注文があったのみで、ある日、突然、不当な理由をつけて一方的に契約解除を迫ってきたからです」(上野氏)

 いったい両者の間で何があったのだろうか? トラブルの詳細については後述するが、契約締結した直後は良好な関係にあったと上野氏はいう。

「21年3月30日に、戸田建設本社の会長室や社長室などにゲナノ社製・空気清浄装置を設置しました。わたしも立ち会ったのですが、その際、今井(雅則)会長からは『頼んだよ。頑張って、力を合わせて一緒に売りましょう』と、さらに、大谷(清介)社長からは『わたしも各方面にゲナノの空気清浄機の営業をしているよ』と声をかけていただきました。また、ゲナノ社製・空気清浄機を広く知ってもらうために、同年11月に東京ビックサイトで開催された医療・福祉機器の見本市『HOSPEX』にも出展したのですが、今井会長が視察に訪れ、『頑張って売っていきましょう』と激励を受けました。今井会長、大谷社長も期待している事業なんだと、わたしも身が引き締まる思いでした」

 しかし、次第に雲行きが怪しくなる。

 

次のページ戸田建設からの注文が突如パタリと途絶えた・・・

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CONTENTS

はじめに◉「社会という荒野を生きる。」とは何か

第一章◉なぜ安倍政権の暴走は止まらないのか

    ——対米ケツ舐め路線と愚昧な歴史観

◉天皇皇后両陛下がパラオ訪問に際し、安倍総理に伝えたかったこと

◉安倍総理が語る「国際協調主義に基づく積極的平和主義」の意味とは

◉戦後70年「安倍談話」に通じる中曽根元総理の無知蒙昧ぶりとは

◉盛り上がった安保法制反対デモと、議会制民主主義のゆくえ

◉安保法案の強行採決に見られる日本の民主主義の問題点とは

第二章◉脆弱になっていく国家・日本の構造とは

    ———感情が劣化したクソ保守とクソ左翼の大罪

◉なぜ三島由紀夫は愛国教育を徹底的に否定したのか

◉「沖縄本土復帰」の本当の常識と「沖縄基地問題」の本質とは

◉大震災後の復興過程で露わになった日本社会の「排除の構造」とは

◉除染土処理の「中間貯蔵施設」建設計画はすでに破綻している!? 

◉なぜ自民党はテレ朝・NHKの放送番組に突然介入してきたのか

◉憲法学の大家・奥平康弘先生から学んだ「憲法とは何か」について

◉広島・長崎原爆投下から70年と川内原発再稼働の偶然性とは

第三章◉空洞化する社会で人はどこへ行くのか

    ———中間集団の消失と承認欲求のゆくえ

◉ISILのような非合法テロ組織に、なぜ世界中から人が集まるのか

◉ドローン少年の逮捕とネット配信に夢中になる人たちの欲望とは

◉元少年Aの手記『絶歌』の出版はいったい何が問題なのか

◉地下鉄サリン事件から20年。1995年が暗示していたこととは

◉「お猿のシャーロット騒動」と日本のインチキ忖度社会とは

◉戦後日本を代表する思想家・鶴見俊輔氏が残したものとは何か

第四章◉「明日は我が身」の時代を生き残るために

    ———性愛、仕事、教育で何を守り、何を捨てるのか

◉なぜ日本では夫婦のセックスレスが増加し続けているのか

◉労働者を使い尽くすブラック企業はなぜなくならないのか

◉「仕事よりプライベート優先」の新入社員が増えたのはなぜか

◉「すべての女性が輝く社会づくり」は政府の暇つぶし政策なのか

◉ISILの処刑映像をあなたは子供に見せられますか

◉青山学院大学学園祭の「ヘビメタ禁止」騒動は何が問題だったのか

◉「ベビーカーでの電車内乗車」に、なぜ女性は男性より厳しい目を向けるのか

以上「目次」より

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大崎量平

おおさき りょうへい

記者・編集者

学習院大学文学部哲学科卒業。大学卒業後、医療系出版社、編集プロダクション、フリーランスの編集記者、KKベストセラーズ「月刊CIRCUS」編集部、徳間書店「週刊アサヒ芸能」記者、家電業界誌、光文社「FLASH」記者を経て、2018年より講談社「週刊現代」記者として活動。芸能・スポーツからビジネス、社会評論に関する書籍の構成ライターも務める。

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