広末涼子からSPEED、ハロプロ、AKB&坂道まで。「合法的売春」としてのアイドルポップス最強論
海外からも愛される「日本のアイドル文化」の本質
■ファンのアイドルに対する性的な欲望を喚起
たとえば、AKBのメジャー2作目「制服が邪魔をする」。そこには、平成版「セーラー服を脱がさないで」ともいうべき世界観が託されていた。放課後に渋谷で好きな男とデートしている女子高生がキスやハグ、さらにはその先への渇望をつのらせるという内容。「会いたかった」の次のシングルにこれを持ってきたのは、アイドル及びアイドルポップスとはこういうものだという確信のあらわれでもある。
AKBはPV制作にも力を入れ、なかでも「ヘビーローテーション」のそれは話題になった。監督は蜷川実花。下着姿ではしゃぐメンバーたちの振り切れたお色気がまぶしく、パワフルな映像作品だ。こういうものもまた、男たちの欲望を暴力的なまでにかきたて、CD購入、握手会へと走らせた。
そんなAKB商法の極みというべき選抜総選挙では、推しの子の順位を上げて感謝されたい、自慢したいというファンの意識を巧みに刺激。そうやってアイドルたちがちやほやされる姿は、同性からの憧れも引き出した。いわば、少女のセックスアピールをヘビーローテーションさせたことが、日本中を巻き込むブームへとつながったのだ。
秋元が彼女たちに書く詞には「僕」を一人称にした男目線のものも目立つが、恋愛(性欲)至上主義的なところは変わらない。たとえば、日向坂46のデビュー曲「キュン」にしても、電車のなかで好きな子の一挙手一投足に萌える男の歌。しかし、大量の女の子たちによる「キュン」の連呼が性別を無化し、せつなくも愉しい恋の空気感をかもしだす。ストーカーかよというツッコミも飛び出したものの、恋とはもともとそういうものだ。
ただ、時代を読む才覚にも長けた秋元は、昭和の頃のような無茶はしない。乃木坂46のデビュー曲「ぐるぐるカーテン」ではいわゆる百合的な雰囲気を上品に描いて、AKBとの差別化に成功した。しかもこのとき、女の子同士のこういう世界にも萌えさせられることに気づいた男は少なくないのではないか。
そういう意味で、欅坂46のファーストアルバム「真っ白なものは汚したくなる」に収録された問題作「月曜日の朝、スカートを切られた」にも、瞠目させられた。