なぜ信者は教祖の復活を祈り続けるのか?「今からでも間に合う!幸福の科学入門」(後編)【もっちりーま】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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なぜ信者は教祖の復活を祈り続けるのか?「今からでも間に合う!幸福の科学入門」(後編)【もっちりーま】

宗教二世問題から考えるべきこととは(後編)

 

6.1度目の死(2004年の心臓発作)/ 新復活祈願までの文脈

 奇跡を否定すること、「科学的に死んだ人間は生き返らない」と言うことは、復活を肯定する信仰の世界においては意味がありません。ただ、今なぜ隆法氏の「復活」が祈られているのか、を考えることは「信者が何をどう信じてどう行動するのか」を理解することに繋がり、それが宗教問題、カルト問題、二世問題を把握する糸口になる可能性はあります。

 幸福の科学の二つ目のターニングポイントは、今回の「復活の祈り」に繋がる、2004年の隆法氏の「生き返り」です。

 隆法氏の著作『新復活 (2019)』によると、隆法氏は2004年に一度死んで復活した、奇跡体験をしています。隆法氏は2004年5月14日に心筋梗塞を起こし、翌日15日に軽い検査のつもりで病院へ行くと、レントゲンで心臓から肺までが水で真っ白になっていることがわかり、「心臓が収縮していないということは、血液が送れていないということ」、「血液が送れていないということは、死んでいる人と同じということです」と言われたため「死んだ」と認識しているようです。

 「本当に死んで生き返ったのか」を問うことは無意味ですが、2004年〜2006年の間に何かがあり、それ以前と以後の幸福の科学の姿勢が全く違うことは明らかです。

 隆法氏が「1度目に亡くなった」2004年までは、霊言の出版も控えられ、本部からの御法話中継などあくまでも組織としては内向きな姿勢だったのに比べて、2007年からは全国の支部巡錫、海外巡錫、2008年幸福の科学学園創設の発表、2009年に幸福実現党立党、2010年に公開霊言など、外向きの活動が突然活発になります。「宇宙人霊言」が始まったのも2010年以降です。宇宙に関することは初期『太陽の法』などで触れられて以降ほとんど説かれておらず、「『宇宙の法』が説かれるのは、総裁先生が死ぬ直前」だと言われていましたが、宇宙に関することも説かれ始めました。

 そしてそれらの活動の随所で、「死にかけたがまだやり残した使命があると思って生き返った」、「元妻はこういう外向けの活動を邪魔していた」というようなエピソードが入れられるようになったのです。

 月刊誌『幸福の科学』で2005年から隆法氏が連載している「心の指針」という詩篇シリーズも、自身が道半ばに死んだとしても連載が載り続ける限り信者を繋ぎ止めて置けるだろう、という意図で、2004年の病気の直後に9年分が書き貯められた、と教わりました。

学園の壁にも「心の指針」が掲示されている。年に一度信者の中で希望者が受験する『仏法真理学検定試験』の試験範囲にもなる。

 

■7.1度目の「復活」の語られ方が変わり、教団内で「奇跡」の意味が変わった

 隆法氏が2004年に死にかけたことはしばらく公表されておらず、「2008年の英語講義で初めて述べた」と『新復活 (2019)』に書かれています。「死にかけた」ことはそれ以降随所で語られるようになりましたが、強調しておきたいことは、「死後復活した」という言い方は2019年以降に始まったということです。

 2019年に公開された映画『夜明けを信じて。』は、2004年の「復活」体験を元にした映画で、現在信者たちが隆法氏の復活を祈って行っている「新復活祈願 ーオフェアリス霊指導ー」も、その文脈を踏まえて2020年から行われています。

 2019年に『新復活 (2019)』という本と「新復活祈願 ーオフェアリス霊指導ー」が出るまでは、幸福の科学は「病気治し」をしない宗教だと言われてきました。それまでも「ガン撲滅祈願」や「花粉症好転祈願」などが行われていましたが、それらは「治してください、望みを叶えてください」とご利益を期待して祈るのではなく、困難な状況に直面した時に「どうか正しい道をお示しください」と祈り、「こんな自分になりたい」と努力を誓うものでした(今もそう教えられているはず)。「映画を観ただけで病気が治る」、「御法話をみて病気が治った」という信者の声が教団機関誌などで紹介されることはありましたが、「祈れば解決する」というのはメインの教義ではなく、「人事を尽くして天命を待つ」が幸福の科学の基本的な考え方です。

 しかし2019年の『新復活』では元妻の実家が病院で、家庭内に「医学信仰」があったことを批判しながら、「本を読んで治る」、「CDを聞いて治る」が「あるかもしれないという気もしてきたのです。」と書かれています。

 隆法氏が「生き返り」を体験したことと、教団が大きくなって起こせる「現象」も変わってきたこと(人の意識が変わっていけばその人たちがいる場所の現象(磁場)も変わっていく「波長同通」という概念が元々あった)で、今までより奇跡が起こるようになり、総裁の役割もそれまでの「悟りを開く」「教えを説く」から「救世主として人を救う」という方向性に変わりました。

 つまり2004年の「復活」自体というより、2019年以降にその「復活」の語られ方が変わったことで、「奇跡」の意味が「人事を尽くして天命を待つ」から「救済を願い、神の働きに期待する」に変わったのです。

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もっちりーま

もっちりーま

幸福の科学学園高等学校卒業。慶應義塾大学卒業。現在トルコの大学の大学院で修士課程。専門は比較文化、比較教育、思考表現スタイル。アンカラ大学にてトルコ語修了(C2)EDEP(イスラーム学卓越教育センター)奨学生。https://twitter.com/Haruharuzo

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