ゴールに目を奪われていては、サッカーは見えてこない
「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦
相手に「このままいける」と思わせたい
というのも僕は、ジェフの選手の心理面を利用してみようと考えたのです。
負けたことのないチームは負けることはあまり想像できません。ましてや、新加入選手の多いチーム状況では、その勢いのまま押し切ろうと考えるのが普通です。ハーフタイムに入る前に流れを引き戻して相手に警戒させて前半を終えるのではなく、相手がハーフタイムに「このままいけるぞ」と声を掛け合うような雰囲気で後半を迎えさせることで、相手に隙が生まれるのではないかと考えていました。
試合にはいつも通り、フラットに入りました。僕はいつも、どう相手に対応していくかの最終的な判断は試合に入って考えるようにしています。できるだけ先入観なく、相手の狙いやその日の調子、味方の意見や表情なども含めて、10分から15分くらいで最初の見極めをします。
データやその日の想定を頭に入れて挑むようにはしていますが、それも最終的な判断を下す時の材料を持っておくためで、ピッチで起こることをできるだけ正確に“感じる“ために、何かを決めつけて見ることのないように気をつけています。
その試合の最初の感触としては、やはり充分僕たちは対抗できると感じました。そして予想通り、相手には自信と勢いがあり、前半の半ばを過ぎると、少し相手にボールを持たれる場面が増えてきました。
そこで、僕は試合前にあらかじめ想定していた戦い方を選択しました。
ハーフタイムを迎えるまでの時間に相手はビッグチャンスもありましたし、一つの賭けではありましたが、なんとなくジェフの選手たちに「このままでいけそうだ」と思っているような雰囲気を感じた僕は、このまま前半を乗り切ればこっちのものだと思っていました。
(相手に隙が生まれたかは分かりませんが)結果はそのプラン通り、後半の一気の2ゴールでジェフに黒星をつけることができました。ジェフの選手たちは、自信を持って後半に挑んできた分、僕たちの先取点に必要以上に動揺したように見えました。