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戦前・戦中の精神を取り戻さなければ日本人は危機に立ち向かうことができない

保守派の重鎮が語る変わらぬ真理。加瀬英明著の最新刊『いま誇るべき日本人の精神』5月10日発売。

「日本文化には世界が取り入れるべき模範がある」(ヘンリー・S・ストークス)、「日本人の精神に宿るDNAが世界から見直されている」(ケント・ギルバード)。
英国人も米国人も絶賛する日本人の精神を取り戻し、混迷する世界情勢のなかで日本がプレゼンスを発揮するにはどうすればよいのか?
保守派の重鎮・加瀬英明氏による熱き提言。

 

 

 日本は国民が、心を分ち合っている。互に心が通じる、和の文化を持っているために、心を外国人とも分ち合うことができると、思ってしまう。
日本国憲法があれば、日本の平和が脅かされないとか、国連を〃世界の平和の殿堂〃として崇める、日本に独特な信仰は、外国人も、日本人と変わらない和の心を、持っていると考えて、警戒心をいだかないことから、発しているのだろう。
 日本は西洋の列強によって、幕末に開国することを強いられてから、独立を守るために、国をあげて「文明開化」政策をとった。
 ところが、西洋を模倣することが、手段でしかなかったはずなのに、洋化の急流のなかで、手段と目的が取り違えられて、日本人のあいだに、西洋崇拝癖がひろがるようになった。

 それでも、大多数の日本国民が、日本に誇りをいだいていた。
 ところが、先の大戦に敗れてから、日本を守るために戦った体験が、風化するにしたがって、アメリカによる保護を、〃平和憲法〃による恩恵だと、思い違えるようになった
〃平和憲法〃は、日本が罪深い国であって、武力を捨てて、国民の生命と安全を、世界の諸国の善意に委ねることを、前提としている。

このままアメリカ盲信していればよいというはずがない

 そうするなかで、国民のあいだに、アメリカが手本とすべき民主主義国だという、アメリカ崇拝癖が定着するようになった。
 私はアメリカの大学に、一九五〇年代末に留学した。その時に、アメリカで連邦政府が一九三六年から三年を費やして、歴史史料として多数の奴隷の生存者たちの聴き取り調査を行った報告書が、存在していることを知った。
 この記録は、『奴隷の証言 元奴隷との対話によるアメリカ合衆国における奴隷の民俗史』(Slave Narratives: A Folk History of Slavery in the United States from Interviews with Former Slaves.)と題して、一九四一年までに全十七巻にのぼる記録が、刊行されている。

 私はアメリカで、一八六五年まで奴隷制度が行われていたことを、頭のなかのどこかで承知していたが、一九三六(昭和十一)年生れなので、一九三六年にまだ多くの奴隷体験者が生きていたことを知って、ごく最近まで、アメリカに奴隷制度が存在していたのだと、心に刻まれた。

 報告書を図書館で、何巻か拾い読みしたが、二三〇〇人の元奴隷による証言を集めたもので、むごい内容だった。アメリカのおぞましさを、あらためて知った。
護憲主義者たちは、アメリカをはじめとする諸外国を盲目的に信頼するあまり、国防努力を嫌って、毎日、無防備のまま、過している。

 平成二十三(二〇一一)年三月三日に、想定外の事態に見舞われたために、福島で原発事故が起って、全国民を震駭(しんがい)させた。
その二年六ヶ月後に、政府の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が、報告書を発表している。

 報告書は冒頭で、次のように述べている。
「福島原子力発電所事故は終わっていない。そして、日本の原発は、いわば無防備のまま、3日の日を迎えることになった。」
 無為に過すことが、「国民の命を守ることよりも優先され、世界の安全に対する動向を知りながらも、それらに目を向けず安全対策は先送りされた。」
「『想定外』『確認していない』などというばかりで危機管理能力を問われ、日本のみならず、世界に大きな影響を与えるような被害の拡大を招いた。
 この事故が『人災』であることは明らかで、歴代及び当時の政府、規制当局、そして当事者である東京電力による、人々の命と社会を守るという責任感の欠如(けつじょ)にあった。」
 日本の国防体制の欠如について、警告している文章として、そのまま読める。戦後の日本経済の発展を世界に向かって誇るよりも、日本文化を誇るべきではないだろうか。

【目次】
第一章 日本を取り巻く荒波の世界
世界はどこへ向かっているのか/混乱する中東/中国は崩壊しつつある/日本を踏み潰したい中国/中国の「核心的利益」とは/朝鮮統一という悪夢/アメリカからの自立/内に籠るアメリカ/中国は二0一七年に崩壊する/プチン大統領と習近平国家主席の夢
第二章 中国といかに対峙すべきか
日本人らしさと中国人らしさとの戦い/インドにとっての中国は宿敵/アジア諸国との絆を深める/クリミア地方の併合/ISは空爆でどうなるのか/イラクとシリアを舞台にした抗争/「エイジアン・ピボット」戦略の誤算/安保法制が「戦争」なら中国は「戦争国家」/護憲が平和を守ったか/商人の国となった日本における武士とは/国防に歯止めをかける!?/高松宮殿下の日記/高齢化する自衛隊
第三章 傲慢な中国は世界から孤立する
アメリカが中国に抱いた幻想/冷めていく米中関係/オバマ政権によるシリア政策の失敗/台湾国民が中国に突きつけた「ノー」/南シナ海と東シナ海を中国の内海に/台湾は中国の一部ではない/最も重要なのは日台関係/アメリカ軍は動かない
第四章 日本人の精神を取り戻す
変化するアメリカの日本観/アメリカ人を魅了した安倍首相の演説/日本人にとっての演説とは/「性奴隷」という誤解/日本が危機に立ち向かうには/劣化する日本人/昭和天皇の靖国参拝/歓迎された警察予備隊/日本独自の防衛体制を/被爆国家である日本こそ核武装すべき/日本人本来の徳目
第五章 日本国憲法の欺瞞
日本国憲法が日本を守ったのか/マッカーサー元帥との会合/日本国憲法の出自/押し付けられた第九条/「われら」は日本国民ではない/日本の座る文化/現行憲法の?/なぜ日本国憲法は定着したのか/自虐史観は日本国憲法の影響/寄生虫の平和/日本は誇り高き国だった
第六章 国連という危険ドラッグ幻想
「国際連合」は誤訳/「国際連合」と「連合国」/「平和を愛する国」の条件/当初は日本でも「聨合国」/隠された国連の本質/国連憲章の「敵国条項」/国連信仰の弊害/国連中心主義という妄想/国際政治の現実/軍人のいない首都/言葉のすり換えで誤魔化した現実/国民から孤立した自衛隊/日本の包装文化
第七章 日本人は「心」と「和」の民
「おもてなし」と「サービス」の違い/日本人の「心」とは/世界平和をもたらす「和」の文化/天皇家と短歌/自然と一体でないのは人間だけ/内なる日本人との和解/大切なのは言葉より心/日本を守る武の心/いつから〝軍発言〟が叩かれたのか/清浄感こそが日本文化の特徴
第八章 人種差別のない理想世界へ
他者を排斥しない日本人/寛容なる和の宗教/パラオ島民を対等に扱った日本統治/ユダヤ人を救ったのは日本だけ/アメリカで巻き起こる歴史戦/根底に残る白人優越主義/害獣とみなされたインディアン/進化論を認めないのは黒人差別からか/日本兵とドイツ兵の扱いの違い/日本人の奮闘が人種差別をなくした/人種平等の世界を築くことが日本人の夢

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加瀬 英明

かせ ひであき

1936年東京生まれ。外交評論家。慶應義塾大学、エール大学、コロンビア大学に学ぶ。「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長。1977年より福田・中曽根内閣で首相特別顧問を務めた。日本ペンクラブ理事、松下政経塾相談役などを歴任。著書に『イギリス 衰亡しない伝統国家』(講談社)、『天皇家の戦い』(新潮社)、『徳の国富論』(自由社)、『アメリカはいつまで超大国でいられるか』(祥伝社)、『中国人韓国人にはなぜ「心」がないのか』、『大東亜戦争で日本はいかに世界を変えたか』、『いま誇るべき日本人の精神』(ともにKKベストセラーズ)など。



 


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  • 加瀬 英明
  • 2016.05.10