AI時代になっても変わらない 「礼儀正しさは最大の攻撃力」【佐々木常夫】前編
仕事人生を学び直すヒント
いま大きな話題となっている対話型AI「ChatGPT」−−。今後あらゆる分野において、AIが席巻し、人間の仕事をどんどん奪っていくといわれている。AIに仕事を奪われないために、そして、先行き不透明な時代の中、わたしたちは、この先、どう生きるべきなのか? 元東レ経営研究所社長で累計190万部のベストセラー作家である佐々木常夫氏が〝はたらく〟すべての人たちに向けた提言を特別公開する【前編】。
■「信頼される人間力」がないと生き残れない
特に、これからの時代は、信頼される人間力を高めていくことが重要だと考えています。ビジネスにおいて〝信頼〟は最も大切な要素です。働くということは、結局、相手に貢献することなのです。誰かのためを思って精一杯、貢献することで、相手は感謝をしてくれて、自分の存在を認めてくれて、信頼関係が生まれます。そして、そのような関係を築くことで、幸福感や充実感に満たされて、
ビジネスは、さまざまな人との関わり合いの中で進行していきます。そのため、どんなにひとりの人間が最高のパフォーマンスを発揮しても、メンバー間で意思統一が図れていなければ、プロジェクトは失敗に終わります。つまり、上司、取引先、同僚、部下……と信頼関係を築いておくことが重要なのです。
しかも信頼関係があれば、個人の仕事の生産性も高まります。例えば、上司と良好な関係が築けていれば、たとえトラブルが発生したとしてもすぐに報告に行き、助け舟を求めることができます。要するにチームが絆で結ばれて結束していれば、自然とお互いを助け合い、刺激を受け合いながら、高いモチベーションを持って仕事を進められるのです。
それでは、誰からも信頼される人になるために、まず心掛けるべきこととは? その前提になるのが〝礼儀正しさ〟です。
人に会ったら挨拶をする、何かをしてもらったらお礼を言う、嘘をつかない、ミスをしたら謝る、身だしなみを整える……。こうした当たり前のことを継続する、すなわち礼節を尽くすことがコミュニケーションの礎になるのです。
「なんだ、そんなことは知っている」と反論する人もいるはずです。ですが、自分の日ごろの言動を振り返ってみてください。「忙しい」「疲れている」を言い訳に、挨拶を怠り、ヨレヨレのスーツを着続けていませんか?
礼節を尽くす−−。これをきちんとできているビジネスマンは多くありません。だから、仕事がうまくいかないのです。
私はいつも「礼儀正しさは最大の攻撃力」と言っています。礼節を尽くすことで、結果的に仕事の効率が上がり、多くのチャンスが生まれるからです。ただし、この礼儀正しさというのは、形だけの礼儀を指しているのではありません。いくら敬語を使っても、礼儀の本質が分かっていなければ、ただ慇懃無礼なだけだと相手にとられかねません。
礼儀の本質とは、相手を尊重することです。
例えば、きちんとした服装をするのは、相手に敬意を払っていることを表すためです。清潔であることは当たり前で、相手がネクタイを付ける人ならこちらも同じようにネクタイを付けるなど、自分ではなく相手を優先しなければいけません。時間を守る、ということも相手を尊重することにほかなりません。時間に遅れるということは、相手の時間を奪うということであり、それは最も礼節を欠いた行為です。時間厳守はビジネスマンの鉄則。たとえ、どんなに仕事ができて才能があっても、時間を守れなければ人から信頼されず、結局のところビジネスで成功することはありません。
礼儀正しさとはスキルではなく〝志〟の問題です。そもそも、自分の地位やお金のためだけに働いている人は、真の礼儀は身に付かないでしょう。まずは「仕事は自分のためでではなく、世のため人のためにする」という信念で、関わる人たちの成長や幸せを本気で考えながら仕事をすること。
この志を持ち、積極的に行動を起こせば、人は本当の意味であなたを信頼し、自分の味方になってくれるでしょう。
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