国内初のM&Aプラットフォーム「TRANBI」生みの親に聞く新規事業創出の秘訣
■NAGANO START UP STUDIOの立ち上げと行政連携
チャレンジできない背景のひとつに、周囲に起業している人がいない、起業というものに接する場が少ないという環境面はとても大きいと思います。地方と都市部を例に挙げると、やはり東京のような大都市は、スタートアップ企業をはじめ、起業を身近に感じられるコミュニティや、ロールモデルとなる起業家の数が多いですよね。そのようなコミュニティに属していれば、「自分もやらなければ」という意識が自然と芽生えてくるはず。起業という選択肢を一般的なものにするには、まず「つながる場」の構築に取り組むことが大切だと思います。そこで、2022年に立ち上げた起業コミュニティがNAGANO START UP STUDIO(以下、NSS)です。
NAGANO STARTUP STUDIO
長野市からの委託を受け、NSSの設立、運営をしておりますが、事業開発に必要なリソースを会員同士が持ち寄り、長野から新規事業を生み出し続けることを目的とした起業コミュニティとなっています。金融機関や投資家など、幅広い領域の専門家による起業家ネットワークを構築し、起業を志す人材に対して、多面的な創業支援をしています。長野市における「起業挑戦者の数」と「新規事業開発の数」を増やすことを目指しています。NSSでは、起業を目指す人々がそれぞれのアイデア、ビジネスモデルを発表し、審査を通過すると「スタートアップ会員」になります。スタートアップ会員に対しては、経営者によるセミナー、アイデアソンなど、事業創出につながるさまざまなイベントを通じて、マーケティングやファイナンスなどの知見を持つプロフェッショナルが「メンター」になり、事業アイデアのブラッシュアップを支援します。私もメンターの1人として、スタートアップ会員のメンタリングやプロモーション支援などを担当しています。
■NSSのビジネスコンテスト。社内の成功体験を起業コミュニティで再現させる。
アスクホールディングスでは、社内行事として「ビジネスコンテスト」を定期的に実施していました。ビジネスコンテストは、参加を希望した社員が、顧客課題の定義や市場調査、収支計画などの段階を経ながら、事業プランを一から作り上げていくというものになっています。新規事業立ち上げのハードルを取り払い、社員が楽しみながら事業創出の経験を積める社内イベントとして、2016年から開催を続けてきました。このビジネスコンテストを、社内だけに留めていてはもったいない。起業をしたい沢山の人々がつながる場、コミュニティを作れないだろうか。そのような思いから、2021年度には、他社の企業も交えたビジネスコンテストを実施し、2022年にNSS設立に至りました。NSSでは、現在第1クール/第2クールのプログラムが開催中です。私自身、これまでにメンターとして18組のチームを育成してきました。最大1,000万円の事業化支援金を獲得できるアイデアピッチも実施済みです。スタートアップ会員の中からは、すでにサービスのローンチに至った事業も生まれていますので今後が楽しみです。
■高橋氏が見据える未来とは
日本、とりわけ地方においては、起業に触れる場、会社経営を学べる場がまだまだ少ないと感じます。繰り返しますが、起業や新規事業には失敗がつきものですから、経営力を磨くためには、挑戦者同士がお互いの失敗から学び合い、モチベーションを高め合えるコミュニティが必要です。その点において、NSSは起業支援の場として機能していると思います。NSSのようなコミュニティの輪をどんどん大きくしていきたい。そうすれば、面白い事業が世の中にもっと沢山出てくるはずです。日本国内の市場は縮小傾向にあると言われます。しかし、起業という観点で見れば、資源は豊富にあると私は捉えています。NSSの会員が目指しているのは、売上100億のビジネスを作ること。ぜひ、長野から世界へ飛び出すビジネスを生み出してほしいですね。一方で、アスクホールディングスの未来としては、国内はもちろん、海外市場を強く意識していきたいですね。もともと社員の半数が英語や中国語に堪能で、海外企業との直接取引も豊富にあります。日本の市場が縮小する中で、海外に視野を広げていくことは重要です。会社としても、この度、中国に拠点を設置、稼働したばかりです。既存の工業資材製造業を基盤としつつ、新規事業開発にも取り組み、「100年続く老舗ベンチャー企業」を目指していきます。
2023年4月1日に100年続く老舗ベンチャー企業へと向かっていくために、”アスク工業”から”アスクホールディングス株式会社”に社名を変更した。
- 高橋 聡(たかはし そう)
1977年生まれ。長野県長野市出身。長野高等学校を卒業後、米シカゴのデポール大学に留学。アクセンチュア株式会社を経て、2005年、アスク工業株式会社に入社。2010年、同社代表取締役社長に就任。アスク工業の事業から分社化した「株式会社トランビ」の取締役創業者を務めるほか、起業コミュニティ「NAGANO STARTUP STUDIO」の運営にも参画し、メンターとして起業家支援を担当している。
- TRANBIサービス紹介
TRANBIは、会社や事業を売却したいオーナーと、事業を引き継ぎたい法人・個人をつなぐM&Aプラットフォーム。中小企業や個人事業主、会社員など、幅広い層に利用されており、2022年には会員数11万人を突破。「Gomez M&Aプラットフォームサイトランキング2022」において総合第1位を獲得するなど、業界最大級のM&Aプラットフォームとして知られている。
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