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“学級崩壊の芽”は4月からすでに出始めている 最大の原因と最善の対策とは【西岡正樹】

多感な子どもたちを教え支えていくために


授業が成り立たない・学習が遅れる・いじめが起きる・不登校の生徒が増える…“学級がうまく機能しない状況” が「学級崩壊」。「学級担任の指導力不足の問題や学校の対応の問題,子どもの生活や人間関係の変化及び家庭・地域社会の教育力の低下等」と複合的な原因を文科省は指摘しているが・・・。我が子を学校に通わせる親世代は決して他人事ではないだろう。「教室が崩れ始める芽はね、すでに4月に出ているんだよ。それに気づかないと取り返しがつかなくなる・・・」と語るのは小学校教員歴45年の西岡正樹氏。教師や親や地域は、この多感な時期の子どもたちをどうやって支えていくべきなのか? 必読の知見。


小学校教室のイメージ。学級崩壊は足音を立てずにやってくる・・・わけではない(写真:PIXTA)

 

■教室の崩壊は実は4月からすでに始まっている

 

 新年度を迎えると、子どもたちの心は揺れ動く。揺れ動く心の中は、不安と期待が混ざり合った複雑な気持ちで満ちている。「新しいクラスでうまくやっていくことができるかな」といった不安や、「あの子と一緒になれればいいな、あの先生だといいな」といった期待が行ったり来たり。新しい始まりというのはそういうものだが、半世紀以上前、私が子どもの頃(半世紀以上前)からそれは変わらない。

 私の記憶の中に、鮮明に残っていることがある。新年度になり、私は5年生になった。

 その年、私には大きな不安があった。とても厳しいH先生が5学年を担当するという噂があったからだ。いよいよ担任発表の時、幸いに新しく担任になったのはMという女性の先生だった。M先生は一見優しそうだが、厳しそうな雰囲気も滲ませている。それでもその時は、最大の危機を抜けたという安堵感が、私の心の中に満ちていた。その数十分後、私の安堵感が木っ端みじんに吹き飛ぶような言葉が、M先生の口から発せられるとは、予想すらしていなかった。

「私は、自分のことをきちんと私にアピールしてこない人の名前は憶えません」(今なら完全にアウトな発言)

 そう、言い放ったのだ。対人恐怖症で赤面症だと自認していた私にとって、とんでもないクラスに来たな、という「恐ろしさ」に似たものを感じた瞬間だった。それと同時に、今まで経験したことのない高揚感が沸き上がってきたのを憶えている。

 さて、新学期が始まったばかりだが、伝えなければならないことがある。学校の現実的な問題として、「教室が崩れる」ことは珍しいことではなくなっている。それは日本の、どの地域の学校でも起こり得る現実なのだ。新年度が始まったばかりだというのに、もう「教室が崩れる」話か、と思われるかもしれないが、今だからこそ取り上げるべきことだと私は思っている。何故なら、崩れる教室の始まりは、教室が開かれる4月からすでに起こっているからだ。

 一つの小学校で2つ、3つの教室が崩れる。それさえも特別なことではなくなっているというのが、日本の都市部の学校の現状である。しかし、「教室が崩れる」といっても、教室がある日突然にガラガラと崩れ始めるわけではない。そもそも「崩れる」というのはどういうことなのか、その経過を示すと、次のようになる(私自身が見聞きした実態である)。

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西岡正樹

にしおか まさき

小学校教師

1976年立教大学卒、1977年玉川大学通信教育過程修了。1977年より2001年3月まで24年間、茅ヶ崎市内の小学校に教諭として勤務。退職後、2001年から世界バイク旅を始める。現在まで、世界65カ国約16万km走破。また、2022年3月まで国内滞在時、臨時教員として茅ヶ崎市内公立小学校に勤務する。
「旅を終えるといつも感じることは、自分がいかに逞しくないか、ということ。そして、いかに日常が大切か、ということだ。旅は教師としての自分も成長させていることを、実践を通して感じている」。
著書に『世界は僕の教室』(ノベル倶楽部)がある。

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