欠陥だらけの「インボイス制度」本当にこのまま実施されるのか?
変わりゆく税のしくみの問題点とは
■インボイスがスタートすると増税になる理由
読者の中には、自宅に届く電気料金の領収書に「再エネ賦課金」と記載されているのを知っているかもしれない。再エネ賦課金とは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(太陽光発電など)の一部費用を、電気料金の一部を利用者(国民)が負担するようになっている制度だ。実は再エネ賦課金もインボイスの対象になっている。つまりインボイスが始まると、再エネ賦課金から消費税分を利用者が支払うのだ。これは資源エネルギー庁が決定し通達済である。
電気料金にインボイスによる負担増は、事実上の増税といってもいいだろう。
ただでさえ物価高によって苦しんでい状況なのに、インボイスのせいで電気代がさらにアップする。インボイスは個人事業主だけの問題ではないことがはっきりしている。
■税の専門家から見てもインボイスはダメな制度
議員会館に集まった税理士は、2020年から専門家の観点からインボイス導入を反対する活動を行っている。彼らは現場で「そもそも制度が複雑でよく分からない」「コロナで先行き不透明の中、制度を理解する余裕もない」といった声を聞いているそうだ。この状況下で実施すれば、中小事業者にとっては悪影響となり混乱の元になると断じている。
「インボイス制度はすごく筋の悪い税制。この穴を今塞がないと、将来失われた30年が40年、50年になっていくのではないかと思っている」と消費税の不備を突く発言が出た。他にも、「税金の不知による多数の無申告者が誕生して、その結果が、大量の滞納者を生むかもしれません」といった危惧が出ている。
「滞納と聞くと納税者が悪いという声もありますが、そうではなくて、制度が破綻しているということを意味することだとも思います」
「インボイス制度が始まると、これまで貯金すらできていなかった事業者に、さらに追い打ちをかけるようになってしまう」
インボイスは弱者いじめになるのはないか。インボイスのせいで夢をあきらめる人が出てくる可能性もある、そうなった場合は職業選択の自由を侵害することになるのではないか。そう述べる税理士もいるほどだ。
そして税理士自身も、インボイスによる書類と手続きのために業務の負担が増大する。彼らは負担分をクライアントへ価格転嫁はできない。クライアント自身もインボイスの手続きで事務負担が増大するからだ。日本商工会議所、全国商工団体連合会、全国青色申告会総連合、全国中小企業団体中央会などもインボイス制度の見直しや廃止と表明している。その理由は誰も得をしない制度だからだ。
それでも政府は導入を止めようとしない。理由は「複数税率が導入されないと正確な消費税計算ができないからだ」と答えるのみ。
しかし消費税が複数税率になっても2年6ヶ月以上適正な消費税申告が行われている。最早インボイスを導入する理由は破綻していると言っていい。