ナンバーワンより「オンリーワン」なんて、簡単じゃない!【角田陽一郎×加藤昌治】
仕事人生あんちょこ辞典「㋔オンリーワン」の項より
新入社員はもちろん多くのビジネスパーソンがGWへ向けてラストスパートに入ったところだろう。とはいえ、自分はいったい何をやりたいのか、何ができるのか、何をやるべきなのか。常にお悩みは付きもの。バラエティプロデューサーで作家の角田陽一郎氏と、企業ブランディングのエキスパートで作家の加藤昌治氏が編纂したビジネスパーソンのお悩み解決書『仕事人生あんちょこ辞典』がきっと役に立つはず。ふたりの慧眼が光る「オンリーワン」についての議論を抜粋。
「オンリーワンを目指すとロンリーワンになってしまう悲しみが人生にはある。」(角田)
「他人との比較から脱出しようとした結果、比較に絡め捕られる不思議。」(加藤)
■オンリーワンは「ロンリーワン」!?
加藤 これはワタクシ、云いたいことが。
角田 はいはい、どうぞどうぞ。
加藤 「ナンバーワン」って、比較の上でのナンバーワンっていう意味じゃないですか。
角田 2位がいるってことだもんね。
加藤 でも、「オンリーワンも実は比較なんだ」っていうことを、恐山でお坊さんをやっている南直哉(みなみじきさい)さん(1958年生まれの曹洞宗の禅僧。『超越と実存』[2018、新潮社]で小林秀雄賞を受賞)が著作の中で云っておられる。た、たしかに……と、とてもビックリして感銘した次第です。
角田 じゃあ、「オンリーワン」を推奨するような歌は矛盾してるってこと?
加藤 それぞれの歌詞をキチンと読まないと、なんだけど、「オンリーワン」なる概念も、非常に相対的な比較の中で生まれるものである。「比較しないと『オンリーかどうか』って実は分からない。だからオンリーワンを目指すとかえって苦しい」って南さんは云っている。比較から脱しようとしたつもりが、また比較の中に放り込まれる。
だから、ナンバーワンも苦しいけど、オンリーワンってむしろさらに苦しいんじゃないか? という話。
角田 あーなるほどね。
加藤 渡辺和子さん(1927年生まれのカトリックシスター。2016年没。学校法人ノートルダム清心学園の元理事長)の代表的著作でいう『置かれた場所で咲きなさい』(2012、幻冬舎)と「オンリーワン」とは、全く違う概念。「オンリーワン」は結局、「他との相対の中で自分だけ」っていう。引いてみると、比較の中でのオンリーワンなんだけど、「置かれた場所で咲きなさい」はただただ咲いてるだけで、他所で咲いてようが咲いていまいが関係ない。そこには比較がないわけよ。これは全然違う概念。
角田 ナンバーワンのほうの世界側にいて、ワンかツーかは気にするのがナンバーワンだよね、強いて言えば。オンリーワンって云うと、世界の他のものを排除して自分ひとつ、みたいな感じ。
加藤 「ナンバーワンはやめてオンリーワンになりましょう」文脈では、相対の土俵から出られておらず、むしろ「他にないもの」を求めてしまうと、実はかなりきつい比較になってしまう。だからオンリーワンを目指してる人は、実はその「相対・比較の世界」から全然出てないんじゃないですか、と云いたい。無理にオンリーワンでなくてもいいんでねえか?
角田 オンリーワンってことは、つまり自分が唯一のオリジナルだってことだよね。
加藤 他者と比較しないと自分が唯一かどうか分かんないわけじゃない。相手がいる前提じゃないとオンリーワンって云えないわけだよね。
- 1
- 2