ナンバーワンより「オンリーワン」なんて、簡単じゃない!【角田陽一郎×加藤昌治】
仕事人生あんちょこ辞典「㋔オンリーワン」の項より
■大半が「オンリー」じゃなくて、ただの「ワン」
角田 僕はよく、「オリジナルであってもパブリックじゃなきゃヒットしない」ってずーっと言ってる。つまり、「オンリーワン」ってオリジナルだと思うわけ。で、「ナンバーワン」ってのはナンバーツー、ナンバースリーがいる世界だよね。
「オンリーワン」というオリジナルであることは必要なんだけど、それが、ナンバーツーとかナンバースリーがいる世界の中で認識されないとダメなんじゃないかな、と思ってるわけ。だから、「オンリーワンな分野なんてないよ」って質問は、多分まさにその通りなんだけど、ナンバーがたくさんある中でオンリーワンである必要があるかな? とか思ってんだけどね。
加藤 それは分かる。「オンリーワンになりたい」と云う人は、その相対の世界から逃れたい人が多いような気がするので、それに対して「オンリーワン作戦だと、比較の土俵、比較の呪縛(じゅばく)からは逃れられてないんじゃないですか」ってことを云いたい。
角田 逃れられないよね。
加藤 置かれた場所だけで咲いてる生き方もある。比較と距離を置いた選択肢もある。
角田 加藤くんは置かれた場所で咲いてる?
加藤 咲いている、と思いたいですねー。
角田 僕は、どちらかと言うと咲けないからTBSを出ていったわけでしょ。つまり僕はオンリーワンを目指してるのか。
加藤 咲くにも注意が必要で、「置かれた場所で咲いてるかどうか」と、「置かれた場所で大輪の花になってるかどうか」は別で、置かれた場所で大輪の花って云ってる時点で、大小の、つまりは相対の世界だから。
角田 ナンバーワン、ナンバーツーになってるよね。じゃあ加藤くんは咲いてるってことでしょ。
加藤 ただ、咲いてる。と。
角田 じゃあ「ワン」ってこと。
加藤 そう。
角田 オンリーワンじゃなくて、「ワン」ってことだよね。one って普通名詞だもんね、固定ではないもんね。
加藤 自分が「one」として咲いてることに対して、オンリーワンっていうのは、要は他人が認めるものじゃない? 自分以外の誰かが認めることだから、相手が必ず必要になりますよね、と。だけど、ただ咲いてるだけなら、別に相手要らないじゃない?
その価値観の持ち方が全然違うのに、それを一緒にしてる人が多いんじゃないかな? どっちがいいとかじゃなくてさ。
角田 僕は「バラエティプロデューサー」って名乗ってるけど、「バラエティプロデューサー」を名乗ってるのは僕だけなんで、っていうところからいくと僕は多分オンリーワンを目指してんだろうね。目指してるつもりはないんだけど、分析するなら。ああ、だから苦しいんだ。なるほど。
加藤 なんとなく美しくは聞こえるけども、「ただ咲いてるだけ」なことで、なんか好いことがあるかどうかは分からない。ここからはちょっと宗教っぽくなっちゃうけど、「咲いてること自体に価値があるんじゃありませんか?」が教えの一つになっているのが信者の多い宗教の特徴だよね。たぶん。
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