美男美女しかいないヘアカタログはもう古い!?
現在観測 第29回
◆“調子に乗ってる”とだけは思われたくない!
“ブサイクしか載っていないヘアカタログ”「BUSA Hair(ブサヘア)」が誕生した背景には、筆者の学生時代の苦い経験がある。いわゆるスクールカーストというものの真ん中、イケてるグループでもオタクグループでもない、いたって普通のグループに私は所属していた。男子でも女子でも大多数が属しているこのグループには、絶対にやってはいけない暗黙の了解が存在した。
それは“調子に乗ってる”と思われない事。見た目的にカッコいいわけでもなく、サッカー部や野球部などの運動部に所属しているわけでもない私は「○○のくせに」「どのツラ下げて?」と思われる事をとにかく怖がった。とりわけファッションにおいては細心の注意を払う必要があった。
オタクグループは自分の趣味に没頭していれば、オシャレなんかに気をつかわなくても自分のアイデンティティは保たれる。イケてるグループだったら、ただただ自分のビジュアルを高める事に集中すればいい。しかし、“普通”のグループはそうはいかない。カッコつけすぎてもいけないし、ダサ過ぎてもいけない。いつでも“○○のくせに”と言われないように意識しなければいけなかった。
例えば、イケメンがパーマをかけてきたら「オシャレだね」と言われるところ、私が同じ事をすれば「オシャレだね(笑)」になってしまう。異常なことに、“オシャレ”と“ダサい”の二つの言葉をどちらも同じ悪口と捉えていた。完全に自意識過剰というやつだ。
ハッキリ言って今でも私は自意識過剰人間だ。それにはある決定的な出来事が背景にある。今思い出してもゾッとしてしまう。
◆芸能人と同じ髪型になぜか罪悪感
高校一年の夏休み明け、この日は「○○のくせに」が続出する日だ。なにを勘違いしたのか、それまで真面目だけが取り得だったみたいな奴が、髪を茶色くして登校してしまったりする。悲しいことに、そういう奴は“イタイ奴”として扱われてしまう。休み明けで気持ちが大きくなってしまったのだろう。
かくいう私も密かに髪型を変えていた。少しだけ両サイドを刈り上げ、毛先を、気持ち遊ばせていた。パーマをかけたり派手な髪色にしているわけではない。よって、調子に乗っている感はなく、あと一歩でもオシャレしたらバカにされるかもしれない、ギリギリのラインをついていた。“普通”グループに所属する自分ができる最大限の髪型にしている、という自負があった。もし髪型の事を突っ込まれても、「いや、いつも通りにお願いしただけだよ」と言えばいいだけだった。が、その数分後には冷や汗が止まらなくなる。
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