ワンアウトも取れず……苦悩の日々に正田樹からもらった一言
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記〈14〉
開幕から1カ月。立ちはだかる「プロ」の壁と、正田樹投手からのひと言。
優位に立てない
ダッシュでベンチへと向かった。
ベンチには、僕を出迎えてくれる選手たちがいる。労いの言葉が、悔しさを倍増させた。
「ちくしょー」
つい、そんな言葉が口をついた。
ゴールデンウイーク最終日となった5月8日の香川オリーブガイナーズ戦。7対0でチームが大量リードをしている8回ツーアウトから僕はマウンドに上がった。アウトひとつ、しっかり取って帰ってくる。そう思い、バッターに対峙した。けれど……。
結果は散々だった。
先頭バッターへフォアボール。そこからヒット、ヒットで1点を失い、そのまま降板。なにより内容が悪かった。先頭バッターへのフォアボールはもってのほかだ。
コーチに交代を告げられると、ベンチへダッシュで戻った。
いい投球ができなかったとき、僕はダッシュでベンチに戻る。悔しくて、自分に対してなにをやっているんだ、という思いと、次こそはという思いが交錯していた。
来ているファンの方にも、チームにも申し訳なかった。そして、こんな投球を続けていては、チームからの信頼を失ってしまうという焦りにも似た気持ちがあった。
試合は、8対1で勝利したものの、唯一の失点が僕の責任だったことはまた、さらに悔しさを感じさせた。
技術的なことを抜きにして考えれば、原因ははっきりしていた。
ボールが高いこと。
慣れない中継ぎというポジション。
そして、心理的に優位に立てないこと。
ボールが高いことは、これから修正していくしかない。意識してできることだから、徹底しなければと思っている。
一方で、中継ぎというポジションの難しさは、やってみなければ分からないものだった。慣れない分、ブルペンでどこのタイミングで力を入れてマウンドに臨めばいいのか、まだそこへの「ルーティン」が確立できていない。マウンドに上がれば、徐々に自分の調子やバッターの雰囲気を見て探っていけばよい先発と違い、初球からベストボールを投げ込んでいかなければいけない。これは想像より難しいことだった。
また、バッターに対峙する空間でのメンタル的な勝負に勝てないことも大きな課題だった。バッターに対し、なんとなく劣勢というのか、優位な気持ちになって投げ込むことができていないのだ。
この試合も、完全にバッターのペースに巻き込まれている、そんな感じだった。
どうすればいいのだろう――そんなことを試合後も考えた。
- 1
- 2